スペインのプログレッシヴ・ロック・グループ「PLANETA IMAGINARIO」。99 年結成。作品は三枚。 本格的なカンタベリー直系ジャズロック。
Hermann "Mehl" Bauerecker | alto sax |
Josep Manresa "Manre" Zafra | bass |
Vasco Miguel Trilla Gomes Dos Santos | drums |
Eneko Alberdi Laskurian | guitars |
Marc Capel Nadal | organ, piano, synthesizer |
Rafa Gómez López | tenor sax |
The-Hien Trinh | trombone |
Guillermo Villa Valdés | trumpet, flugelhorn |
2008 年発表の第二作「Biomasa」。
内容は、管楽器をフィーチュアしたカンタベリー風ジャズロック。
メロディアスにして諧謔味ある変拍子クロスオーヴァーに、思い切りノスタルジックなラウンジ調の雰囲気(バカラックやニコルズ/ウィリアムズばりのメロディやアレンジ)を盛り込み、チェンバー・ロック的(というか初期 KING CRIMSON 的)な「傾ぎ」も交えた充実の内容である。
管楽器アンサンブルのジャジーでなめらかな調子に、ファズを効かせたギターのぎこちなく引っかかりのあるフレージングがフックを作り、多彩なキーボード・サウンドが豊かな表情を与える。
そして、奇数拍子でスムースに加速するアンサンブルのカタルシス。
執拗な変拍子パターン反復が与える抽象的なイメージと官能的なサウンドの均衡も絶妙である。
ヴォイスや効果音による奇天烈なアクセントで予定調和を引っかき回すのもうまい。
ジャズロックの代名詞でもあるフェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノは哀愁あふれる存在感を放ち、肌理の細かいリズム・セクションも全編で安定した仕事をしている。
アコースティック・ピアノのプレイによる近現代クラシック調の和声の響きがジャズ的な文脈にファンタジックな空気を醸成するいい役割を果たしている。
ハモンド・オルガンやアナログ・シンセサイザーなど、プログレな音も随所にあり。
管楽器では、飄々とした表情のトロンボーンの存在が新鮮だった。
効果音的な断章をはさみ込むアルバム構成もまた懐かしき哉。
すぐに HATFIELD AND THE NORTH、SOFT MACHINE、NUCLEUS、IN CAHOOTS といったグループ名が思い浮かぶ、ある意味クラシックな音楽性であり、またそれと同時に、ソフトなイージーリスニング・テイストがかえって現代的なイメージも与える作風である。
Calix が流れてきてもまったく違和感なし。
マニアックなところでは、スウェーデンの名バンド RAGNAROK に通じる黄昏、場末感あり。
すべての要素を含む 5 曲目が白眉。
「Discurso Cósmico Desde El Planeta Imaginario (Cosmic Speech From The Imaginario Planet)」(1:38)
「El Francotirador De Washington (Washington Sniper)」(5:23)
「Capture (Capture)」(6:16)
「Biomasa (Biomass)」(11:21)ノスタルジックで黄昏たオープニングが出色。さりげなくオクターヴを奏でるギター、一人寝のわびしさを憂うようなローズ・ピアノのささやき。中盤のトロンボーンもいい。
「La Caja Negra (Black Box)」(12:10)終盤の奇数拍子での疾走が非常にカッコいい。
「El Teatro De Los Faranduleros (Farandulero's Theatre)」(3:13)スキャットはリチャード・シンクレアか?!
「Discurso Cósmico 2 (Cosmic Speech 2)」(0:31)ちょっと GONG っぽくていい感じです。
「Hoy Es Un Nuevo Día (Today Is A New Day)」(4:22)鮮やかな変転を見せるフュージョン奇想曲。
ほんのりフュージョン風の序章。管楽器セクションのラウンジ風味とシンセサイザーの妙味で差別化している。ピアノに導かれる展開部も劇的。そして、やや角ばった音も交えつつ回帰するフィナーレ。
「L'estiu (The Summer) 」(6:56)いくつかのモチーフをつなげたような気まぐれジャズロック。重量感あるピアノが印象的。即興もあるのか。
「Trastornos Ópticos Del Oso Bipolar (Optical Delusions Of A Bipolar Bear)」(9:06)歪んだ音による重たいオープニングからカンタベリー直系の技が全開。攻撃的な変拍子アンサンブルのキレもあり。
(Rune 268)
Alfonso Muñoz | alto saxophone, soprano saxophone, baritone saxophone, percussion |
Dimitris Bikos | bass |
Vasco Trilla Gomes Dos Santos | drums, percussion |
Marc Capel | organ, electric piano, piano, synthesizer |
The-Hien Trinh | trombone |
Natsuko Sugao | trumpet |
Andriy Antonovskyi | voice on 10-12 |
guest: | |
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Pablo Selnik | flute on 9-13 |
Guillem Serra Llorenç | French horn on 1,2,5-7 |
Liba Villavecchia | tenor sax on 1,2 |
Sisu Corominas | tenor&alto sax |
2011 年発表の第三作「Optical Delusions」。
内容は、管楽器セクションと鍵盤楽器をメインにしたカンタベリー・ジャズロック。
前作と比べると、諧謔味よりも純音楽的な審美感に基づく高度な展開を目指していると思う。
ファンタジックにしてストイックであり、オプティミステイックでありつつも神秘的な表情は崩さない。
こういったサウンド面での変化の一因は、ベーシストと管楽器奏者の一部がメンバー交代、特にギタリストの脱退だろう。
ギターリストの不在はロック色の交代に直結し、鍵盤奏者の守備範囲の広がりはクラシック色の拡張につながっている。
あえていえば、前作が HF&N だとすると、今回は EGG に迫る音である。
組曲風の作品におけるハモンド・オルガンのプレイとタイトで強圧的なアンサンブルは、まさに EGG と共通する。
美しいアコースティック・ピアノのプレイも多い。
もちろん、管楽器セクションを生かしたオリジナルなスタイルの演奏も多い。
管楽器特有の伸音による、暖かみのあるメロディアスでハーモニアスなアンサンブルから、(特に後半部にある)フルートの入った洒脱なアンサンブルまで、ゴージャスなフュージョンとしても楽しめるパフォーマンスを見せる。
そこへ、エレクトリック・ピアノが加われば、カンタベリーと並び流れるジャズロックの源流の一つである初期 RETURN TO FOREVER に匹敵する魅惑のエレクトリック・ジャズとなるのだ。
そして、そのムーディでリラックスした瞬間に惑溺することなく、さまざまな効果音やファズや美女が眉をひそめるが如き険しさをひょいと放り込むところがじつに小粋だ。
そういうセンスこそがカンタベリーの DNA によるものなのだろう。
「Collective Action (Accio Col-lectiva)」(10:16)
「The Garden Of Happy Cows (El Jardi De Les Vaques Alegres) 」(9:40)
「Xarramandusca (Including Exile) 」(11:36)
「Good Luck, My Friend (Bona Sort Amic Meu)」(1:45)
「The Little Dog-Man's Clinical Preludes (Preludis Clinics Del Home-gos)」
「Angioma」(3:50)
「Scalpel (Bisturi) 」(0:45)
「Hemangioma」(3:09)
「Introduction To Sidewalk Licker (Introduccio De Llepavoreres)」(2:37)
「Sidewalk Licker (Llepavoreres)」(8:00)
「Imperfect Elements In Red Quartz (Elements Imperfectes Sobre Quarz Vermell)」
「Imperfect Purity (Element De La Puresa Imperfecte)」(4:15)
「Pure And Imperfect Art Element (Element Del Art Pur I Imperfecte)」(6:21)
「Imperfect Persuasive Element (Element De La Persuasio Imperfecte)」(2:40)
「The Sea...And Later The Sun...And The Reflection (El Mar. I Llavors Sorti El Sol.. I El Reflexe)」(13:18)
(Rune 318)