フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「PRIAM」。 89 年 ARLEQUIN を母体に結成。 作品は 2002 年現在二枚。 テクニカルかつエクスペリメンタルなインストゥルメンタル・ロック。
Chris Casagrande | guitars |
Laurent Laconbe-colomb | keyboardsr |
Bertrand Hulin-bertaud | bass |
Emmma.M | drums |
97 年発表の第一作「...3 distances / irregular signs ...」。
内容は、スペイシーで妖艶なテクニカル・ジャズロック。
切れ味鋭い変拍子アンサンブルと耽美なアンビエント・サウンドが特徴。
ヘヴィ・ディストーション・サウンドで自在にフレーズを操るギターを俊敏なリズム・セクションが支え、荘厳なサウンドのキーボードが取り巻く演奏である。
キーボードとギターは主張をぶつからせずにタイミングよく呼応して、よりスリリングで劇的な展開を作り上げている。
ギターは、モダンなフュージョン・スタイルをベースにホールズワースやフリップ、ハケットの影響を思い切り受けたようなタイプ。
「Discipline」調の重層ギター・アンサンブルや、きわめて本格的なクラシック・ギターのプレイもある。
キーボードは、アトモスフェリックな演奏に徹しながら、いつの間にか場面を決定してゆくタイプ。
厳粛な近現代クラシック・テイストや電子音楽風の空気感はこのキーボードの存在によるところが大きい。
そして、ワイルドで小気味のいいドラムスはストリート風のタフネスを感じさせる今風のスタイルだ。
全体として、ほの暗く広がる空間をキレのいい音が次々ときらめきながら切り裂いてゆく、そんなイメージの演奏といえるだろう。
いわゆるフュージョンにチェンバー風の構成とサイケデリックな音響を加味した音といってもいい。
最も優れた点は、技巧的なアンサンブルとアンビエントなサウンドの結びつきをごく自然に聴こえさせる曲想である。
イージーな調子や紋切り型のグルーヴに任せて進むような場面は皆無である。
ピアノやアコースティック・ギターを用いたパートにおける叙情的な語り口は、どちらかといえばヨーロッパ風の奥行きを感じさせるものだ。
そして、深々と澱みながら広がるシンセサイザー・サウンドときわめて人工的なシーケンスによるメカニカルな秩序のコントラストや、性急な疾走と悠然とメロディを歌わせるパートの巧みな変転など、技巧そのものではなく、音楽の生むドラマ性と語り口を重んじているようだ。
アメリカのフュージョン屋さんとはまったく異なるアプローチである。
変拍子のテーマやポリリズミックなアンサンブルがさほどトリッキーに聴こえないのは、魅力的なフレーズやアンサンブルを繰り出してゆく呼吸がいいのだろう。
曲想のよさは大作においても顕著であり、最後まで飽かさずぐいぐいと引っ張っていってくれる。
4 曲目の組曲や 5 曲目などでは、メロディアスにしてたたみかけるようなギター中心のアンサンブルが「A Trick Of The Trail」辺りの GENESIS とテクニカル・フュージョンという一見距離のある音楽が合体したような、不思議なイメージを与える。
MINIMUM VITAL と同じく、フュージョンを吸収したプログレの新たなスタイルを提示している。
アルバム終盤、内省的な 8 曲目から 9 曲目のスリリングな飛翔へと進む展開がカッコいい。
「metamorphosis」(8:57)
「labyrinth」(4:11)
「sign beyond the euphratesd」(3:13)
「initiatic quotient of the monk」(26:54)
「hypereyes」(10:45)
「birth of ucbald」(3:04)
「spiral .irregular .end」(13:05)
「dream in a blue forest」(6:12)
「distances」(6:12)
「eternal shperes」(9:19)
(LC 9709)
Chris Casagrande | guitars, synthesizers | ||
Laurent Laconbe-colomb | keyboards | ||
Bertrand Hulin-bertaud | bass | ||
Emmma.M | drums | ||
guest: | |||
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Yannick "Shubaka" Dams | saxes on 2 | Ferdinand Doumerc | alto sax on 2 |
Vincent Poupiard | tenor sax on 2 | Jean-Vincent Oiand | clarinet on 2 |
David Beaufour | percussion on 3, voice on 3,5 | Slim Lazar | electric violin on 3 |
Eric Ferrigutti | percussion on 5 | Choir Of University Toulouse | choir on 5 |
Peggy Pehau | soprano on 6 | Patricia Lafon | alto on 6 |
Christophe Juniet | tenor on 6 | Raphael Beau | tenor on 6 |
Gilles Sandoz | bass on 6 | Bhb | bass on 6 |
2001 年発表の第ニ作「Diffraction」。
内容は、ヘヴィ・ディストーションからイコライザまでサスティン系のエフェクトを駆使した、なめらかなプレイが特徴的なギター(フリップとホールズワースの中間)と、アンビエントかつディープな音響のキーボードがリードする、きわめてモダンな音像のテクニカル・ロック。
第一印象は、80 年代以降の KING CRIMSON、ただし、よりサイケデリックかつジャズロック寄りというべきだろう。
エレクトロニクスを駆使した深みある残響空間を、凶暴なリズムが切り裂き、ギターとキーボードが鮮やかな光の尾を引いてフロントで暴れまわる。
ドラムンベースやポストロックなど現代的な要素もたっぷり取り入れており痛快で迫力もある。
しかし、どこか病んでおり現実逃避的、そんな内容である。
特に新鮮なのは、キーボードによる BRAND X 系のミステリアスな雰囲気と、ストリート感覚あふれるビート感の取り合わせである。
また、ギターはロングトーンで存在感あるメロディを歌い上げる他にも、80 年代 CRIMSON そのもののようなスクエアで緻密なプレイも見せる。
ギター・シンセサイザーによるプレイもあるようだ。
ホールズワースのような速弾きこそないが、スリルを感じさせるフレージングに聴き応えがある。
そして、スペイシーで謎めいた音響が、エキゾチズムを常に漂わせている。
前作と異なるのは、サックスをフィーチュアした 2 曲目のように、SOFT MACHINE を越えて フランク・ザッパ、果てはレコメン的な世界に接近したり、5 曲目のように、本格的な混声コラールを投入したり、はたまた後半のようにエスノ・アンビエントなイメージを延々突きつけるなどの、作曲/芸域の幅の広がりである。
ゲストも大きくフィーチュアしており、内容はきわめて多彩だ。
全体にテクニカル・フュージョン・タッチを見せながらも、普通のメロディやリズムに安住せず、果敢に変拍子アンサンブルやポリリズムの混沌へと突き進んでしまうところや、演奏以前にキーボード、エレクトロニクスを多用して独自の背景/アトモスフィアを描き出してしまうところは、やはりプログレ魂のなせる技なのだろう。
ECM の諸作にも通じるような、古楽/古典への言及もあるようだ。
それでも、難解な世界へひた走るのではなく、あくまで清冽なロマンにこだわるところに好感が持てる。
ギターとキーボードのコンビネーションには、「マイク・オールドフィールド好き」という点だけ除いて、MINIMUM VITAL のペイサン兄弟にかなり近いセンスを感じます。
耽美にして躍動的な音のイメージは一貫するが、楽曲はかなり変化に富んでいる。
いわば、テクニカル・フュージョンの運動性とワールド・ミュージック風のエキゾチズム、そしてクラシックの伝統などさまざまなファクターが結びついた、現代のプログレッシヴ・ロック。
現代版 BRAND X である TUNNELS や GONGZZILA に、キーボードによる神秘性を加え、さらにサイケ、エスノ、テクノなどの要素を放り込んだスタイルともいえる。
にしても、放送事故すれすれのようなブレイクはオン・エア無視の意志表明か?
作曲は 7 曲目以外はすべてクリス・カサグランデ。
スリーヴのインフォメーションによると(難解でよく分からんですが)本グループは、「Parallax Lab Music」なる集団の一プロジェクトらしい。
ウェブサイトはカッコいいのですが、見にくいです。
「Diffraction(Open Limit)」(14:48)メタリックな光沢を放つ混沌を抉り取ってゆく超現代的テクニカル・ロック。
KING CRIMSON にポスト・ロック、ドラムンベースを取り入れて BRAND X 風味のスパイスをちょい効かせた感じ。
8:50 辺りからのサイケ・ドラムンベース with アナログ風シンセサイザー・ソロがカッコいい。
「Conaruatic Blvd」(5:42)変拍子リフの上でサックスがなめらかに歌い、絶叫し、こんがらがり、サイケな音響が取り巻く佳作。
「Grantio Rosa Dei Oeste」(12:53)
ハイテンションにしてミステリアスな快速チューン。
クラシカルにして未来っぽいオープニングと、それを破断するシャープなアンサンブル。
クールでニヒリスティックに始まるが、だんだんロマンティックになってゆく。
それも含めて、カッコいいです。
「Sensitiviris(Chrysarid Square)」(10:30)
アンビエント・テクノ、というよりポリフォニックな TANGERINE DREAM が、フュージョン(YMO か?)やら U.K. 風ネオ・プログレ、HM/HR などの悪夢を見る、という趣の作品。
気まぐれな展開が吉と出るか凶と出るか。
「Stella...」(5:30)聖歌。
「...In Pace」(7:04)無国籍ワールド・ミュージック風ブレイクビーツ。
「Lakeside 7:30 AM」(4:20)キーボードをフィーチュアした佳作。
閉ざされたような世界に緩やかな流れが起き、やがて密やかになめらかに動き出す。
次曲へはシームレスに。
「Feel D-Fract」(6:53)ブライアン・イーノとマイク・オールドフィールドの合作のようなエレクトロニカ作品。
後半の沈黙は何?
(FGBG 4388.AR)