イギリスのメロディック・ロック・グループ「BIG BIG TRAIN」。 90 年結成。PENDRAGON や JADIS のオープニング・アクトをつとめながらアルバムを発表。 作品は十二枚。最新作は 2021 年「Common Ground」。おセンチだが涼しげな英国ポップス系プログレ。
Nick D'Virgilio | drums, percussion, backing vocals |
Dave Gregory | guitars |
Rachel Hall | violin, viola, cello, backing vocals |
David Longdon | lead & backing vocals, flute, acoustic guitars, mandolin, percussion |
Danny Manners | keyboards, double bass |
Andy Poole | acoustic guitars, mandolin, keyboards, backing vocals |
Gregory Spawton | bass, bass pedal, acoustic guitar, backing vocals |
2016 年発表の第九作「Folklore」。
内容は、フォークロアの哀愁ある躍動感を基調にしたアコースティックなブリティッシュ・シンフォニック・ロック。
管弦の音が綾なす田園色豊かな作品である。
フォーク・ミュージックによる土臭くも逞しい芯を通したおかげで英国流のセンチメンタルで深い翳りのあるメロディアス・ロックに素朴な強さやリアルな説得力が生まれている。
優しげなヴォーカルの歌唱がやけにしみじみと沁みるのはそのせいだろう。
器楽はリチャード・トンプソン流の跳ねるような舞踊の調子と GENESIS 風のさざ波のようなアルペジオで粘っこくメロディを支えている。
キャッチ―なメロディやハーモニーのせいで AOR や渋めの歌ものロックになりかけても完全にはそうならないのはこの器楽の捻りのおかげだ。
デリケートな音が描くのは、たとえば、大切な人との別れの予感、長雨にけぶる波止場、埃と枯れ葉の舞う街並み、ピクニックの帰り道の夕暮れのハイウェイ、刈り取り後の小麦畑、夜行列車の車窓に映り込むわびしいネオンサイン、といった誰の生活にも浮かび上がるささやかなペーソスとメランコリーのある情景である。
このそこはかない寂寥感は全体を貫いている。
それがなければ、ハモンド・オルガン、アコースティック・ギター、フルート、チェロといった小道具の使い方に長けただけのオールドスクール・プログレ・フォロワーになってしまっただろう。
ジャジーなバラードとプログレ器楽の組み合わせだけではここまでの深みや凄みは出なかろう。
バグパイプのようなフィドルのような粘っこくリズミカルなテーマが耳に残ります。
プロデュースはグループ。
管弦の調べがパーセルやヘンデルではなく初期の KING CRIMSON (特に「Starless」)に聴こえてしまうことに我ながら苦笑した。
ブックレットの半ばほどにあるバンドを描いたイラストも KING CRIMSON のレコードが懐かしくなるもの。
「Folklore」()
「London Plane」()
「Along The Riddleway」()
「Salisbury Giant」()
「The Transit Of Venus Across The Sun」()
「Wassail」()タイトルは酒宴を賑わす乾杯のかけ声。
「Winkie」()
「Brooklands」()
「Telling The Bees」()不思議なタイトルは、ミツバチが人の生活の重要なニュースを伝えるというヨーロッパの言い伝えのこと。おだやかな佳曲。
(EERCD 016 / GEPCD1049)
Sean Filkins | vocals, blues harp, percussion |
Andy Pool | bass |
Ian Cooper | keyboards |
Laura Murch | vocals |
Gregory Spawton | guitars, keyboards, vocals |
Steve Hughes | drums, percussion |
2004 年発表の第四作「Gathering Speed」。
内容は、繊細なヴォーカル・ハーモニーとアコースティック・ギターによる透明なサウンドが特徴的な、YES、GENESIS 系のネオ・プログレッシヴ・ロック。
冒頭のエンジン音とジャケットのスピットファイアのイラスト通り、1940 年夏、第二次欧州大戦のエース・パイロットの物語だそうだ。
リズミカルで立体的なアンサンブルは YES、アコースティック・ギターのアルペジオとストリングスによる叙情的な展開は GENESIS、優しげでメランコリックなヴォーカル・ハーモニーは YES というよりも元祖である CSN&Y が英国調になったというべきだろう。
メロトロン・ストリングスの多用や 7 拍子アンサンブル、ヴァイオリン奏法など、プログレらしさの演出も的確に行われている。
しかし、本作品で何より称えるべきは、デリケートなハーモニーがたどる繊細でヒネリのあるメロディ・ラインだろう。
美しいのだが抑制が行き届いた淡い色合いの作風において、このメロディとそこから伸びてゆくポップ・テイストだけはくっきりとした印象を残す。
プログレのイディオムを盛り込みながらも、主となっているのは、ネオアコ風の展開なのだ。
ブルースハープの響きにそういうことを感じずにいられない。
また、さりげなくジャズやフォークのニュアンスも盛り込むが、それもプログレ然とせずに、ナチュラルなポップ・フィーリングを生み出している。
このセンスは、ニール・モースに近い。
GENESIS 風のレガートなキーボードや竪琴のようなエレキギターを中心としたインスト・パートも確かに美しいし、悪くない。
しかし、本作で類稀な個性が宿っているのは、ヴォーカルとハーモニーである。
インストゥルメンタルはヴォーカル・ハーモニーと干渉し合うことでより高みに登ってゆくように感じるし、あえていえば、いわゆるプログレから離れていったときにさらに輝くような気がする。
1 曲目のイコライジングされたハーモニーとギター・サウンドや、2 曲目のメイン・ヴォーカルとスキャットのパート、最終曲であるタイトル・チューンなどが本作品の心肝だと思う。
まず、センチメンタリズムとシニシズムが均衡した個性的な英国ロックというべきであり、プログレ的な部分は味つけに過ぎない。
ただし、何度も視点が反転するが、その味つけの仕方はきわめて巧妙である。
ふと気づけば、アンソニー・フィリップス、トニー・バンクス直系のギターとメロトロンによるはかなくも凛々しいアンサンブルに酔わされているのだ。
3 曲目を聴くと THE SMITH と GENESIS がじつは同じ根っこを持っていたことが分かる。
同じ英国の音楽なのだから当然なのかもしれないが、70 年代末から 80 年代初頭に不気味な分水嶺の存在を感じてしまう音楽ファンとしては、こういう視点を持ち難かった。
固定観念を軽々とひっくり返してくれたこの音には感謝したい。もっとも、こういう風にひっくり返されるのが楽しくて聴き続けているというところもある。
閑話休題。
本作品は、往年のプログレらしさを控えめだが堅実な手つきですべて詰め込み、若々しく繊細な英国ポップスのニュアンスを盛り込んで耳に優しくした、きわめて巧妙な作品といえる。
予定調和の極みであるインストと、ロマンチシズムと恥じらいのあるブリット・ポップの邂逅が新鮮だ。
すべてを JADIS の一番デリケートな表現のスタイルで描く作風ともいえるかもしれない。
「High Tide, Last Stand」(7:06)
「Fighter Command」(10:44)
「The Road Much Further On」(8:39)
「Sky Flying On Fire」(6:04) インストゥルメンタル。
「Pell Mell」(6:36)
「Powder Monkey」(9:08)
「Gathering Speed」(7:23) 本アルバムでの作風を代表する傑作。
(TFCD002)
Gregory Spawton | guitars, keyboards, vocals |
Becca King | viola |
Tony Wright | alto sax, tenor sax, flute |
Nick D'Virgilio | drums on 2,4, vocals on 2 |
Sean Filkins | vocals |
Dave Meros | bass on 3 |
Pete Trewavas | bass on 4 |
Steve Hughes | drums, percussion |
Andy Pool | bass |
2007 年発表の第五作「The Difference Machine」。
厳粛にして透明感あるサウンドにサイケデリックなフィルタと憂鬱な仮面をかぶせたような不思議なトーンが貫く佳作。
JADIS と PORCUPINE TREE の中間位置にいる作風であり、とことん英国ロックらしい音楽である。
冒頭の管弦の幽玄な響きからは、PROCOL HARUM に通じる普遍的な悲劇性が感じられる。
前作のようなフックがあまり見当たらず正直かなり地味だが、次第に、穏やかな表現に覆われた深いメランコリーと無常感がしみわたってくることに気づき、静かな自信のようなものが感じられてくる。
そういう作風である。
メロトロン・ストリングス、アタックを消したレガートなギター、ディック・パリー、いやソニー・ロリンズばりの伸びやかなサックス、かすれた薄墨のようなヴォーカル・ハーモニー、キコキコしたハモンド・オルガン、荒々しいベース・ラインといった、いわゆるプログレ・クリシェを散りばめながらも、音楽の幹には、弾むリズム・セクションにギターのコードがバーンと轟く英国ギター・ロックの血が力強く脈づいている。
GENESIS そのままなアンサンブルや GENESIS と PINK FLOYD の合体技もあるが、だからどうということはなく、むしろ、全体の音の質のよさやデリケートな作りの方に耳がいってしまう。
アコースティックな音についてもきめ細かい心遣いが感じられる。
木管楽器、弦楽器らによる厳かにして透き通るように美しい調べがあちこちで吹き上がる。
地味ながらも素直には着地しない sus2 系の和声/メロディが多いだけに、サックスやヴィオラのクラシカルで明確な音の響きの存在感がいや増している。
また、きらめくようなギターのアルペジオはアンソニー・フィリップス直系、しかしそれもここでの巧みな音処理における役者の一人に過ぎない。
モダン・ロックに対するアンチテーゼか、あえて隙間の多い薄く細い音で勝負をかけているようなところもある。
元 JADIS、元 IQ のマーティン・オーフォードの作風に通じる部分も。
ゲストに、SPOCK'S BEARD のデイヴ・メロスとニック・ドヴァルジリオ、MARILLION のピート・トレワヴァスを迎えている。
英国クラシックの流れに手を差し伸べた感もある、ひたすら美しくメランコリックな佳作です。
ちなみに、「Difference Engine」だとバベッジの差分機関だと思いますが、「Differece Machine」だとどうなんでしょう。何か別のもの?
「Hope This Finds You」(3:17)
「Perfect Cosmic Storm」(14:40)
「Breathing Space」(1:47)
「Pick Up If You've There」(13:39)
「From The Wide Open Sea」(1:20)
「Saltwater Falling On Uneven Ground」(12:38)
「Summer's Lease」(7:34)
(EERCD 003)
David Longdon | vocals, flute, mandolin, dulcimer, organ, psaltry, glockenspiele |
Andy Poole | bass, keyboards |
Gregory Spawton | guitars, keyboards, bass |
guest: | |||
---|---|---|---|
Nick D'Virgilio | drums, vocals | Dave Desmond | trombone |
Rich Evans | cornet | Jon Foyle | electric cello, cello |
Dave Gregory | electric sitar, guitar, guitar solo | Nick Stones | French horn |
Jon Truscott | tuba | Francis Dannery | guitar solo, guitar |
Jem Godfrey | synthesizer solo |
2009 年発表の第六作「The Underfall Yard」。
内容は、ギター中心の YES 風のアンサンブルと薄墨を流したようなハーモニーが特徴的な正調シンフォニック・ロック。
淡色系の陰鬱なトーンを基調にアンサンブルの妙味をたっぷりと湛え、全体としては、以前よりもプログレらしさが前面に出た作風になっている。
ギターはりゅうりゅうと鳴り、メロトロン・ストリングスが霧のように吹き上がり、驟雨のようにスネア・ドラムがざわめけば、フルートが感極まって泣き叫ぶ。
芸風を喩えるなら、「昔の DRUID のような癒し系 YES フォロワー」+「アンソニー・フィリップス系 GENESIS」+「イアン・マクドナルド KING CRIMSON」といった感じである。
癒し系の印象は、主として優美なヴォーカル・ハーモニーから来る。
もっとも、新ヴォーカリストの歌唱スタイルは、ジョン・アンダーソンではなくフィル・コリンズやジョン・ウェットンのものである。
AOR っぽくなってしまうところや GENESIS そのものになってしまうところもあるが、大した問題ではない。
オープニングでみるみるうちに培われる神秘性、独特の湿り気は全編を通じて保たれており、英国プログレらしさはほぼ満点である。
4 曲目に代表されるように、小雨に煙る港街の情景のようにくすんだ叙情パートと歯切れのいいインストゥルメンタル・パートのコンビネーションもいい。
また、ブラス・アンサンブルが非常に美しいのも特徴。
これは、パーセル、ヘンデルら英国クラシックの伝統だろうか。
KING CRIMSON の「Islands」にある典雅さと歪な邪悪さをともに巧みに醸し出している。
3 曲目終盤のコルネットの切ないこと!
ただし、アンサンブルやソロといった演奏面の拡充が優先されたせいか、前々作のように耳に残るメロディ・ラインは少ない。
初期 YES 風の尖ったアンサンブルとメロディアスなヴォーカル・ハーモニーの対比のつけ方が若干ハナにつくところもある。
それでも、英国ロックらしいヒネリとクラシカルな叙情性を期待する向きにはど真ん中だと思う。
とにかく、アンディ・ポール氏の作曲、編曲の巧みさを賞賛したい。
最終曲はオムニバス風の力作。ダイナミックにして謎めいたオープニング、すさまじい切れ味のギター・ソロとシンセサイザー・ソロなど、見せ場が続く。
今回もニック・ドヴァージリオ他、多数のゲストがサポートしている。
特筆すべきは、元 XTC の名ギタリスト、デイヴ・グレゴリーである。英国ロックの本質に「ぶれ」はない。
プロデュースはアンディ・ポール。
「Evening Star」(4:53)
「Master James Of St.George」(6:19)
「Victorian Brickwork」(12:33)
「Last Train」(6:28)
「Winchester Diver」(7:31)
「The Underfall Yard」(22:58)絵画的な叙情色に跳ねるような躍動感を加味した大作。チェロの調べが印象的。
(EERCD 005)
Andy Poole | vocals, guitar, mandolin, keyboards |
Dave Gregory | electric guitar, banjo, mellotron |
David Longdon | vocals, flute, keyboards, accordion, vibes, tambourine, banjo, melodica, mandolin, whistle |
Nick D'Virgilio | drums, vocals |
Gregory Spawton | guitars, keyboards, bass |
2012 年発表の第七作「English Electric Part One」。
内容は、管弦の音を活かしたリリカルで透明感のある大人向けブリティッシュ・ロック。
フルートに象徴される優しげな風情を主とするも、キレキレのアンサンブルでユーモアさえ漂わせながら小気味よく駆け回るのも自在であり、さらには随所にフォークのようなルーツ・ミュージックが見え隠れするなど、ブリティッシュ・ロックの王道を悠然と歩む風格の感じられる作品である。
管弦や打楽器など、さまざまな音を使いこなしながらも過剰さとは縁遠く、どこまでも気品と抑制があり、ソフトにしてクールな落ちつきのある作風である。
いわゆるノリで勝負のロック・バンド的な面は少なく、必要な音で作品を綴ってゆくという姿勢が感じられ、そういう意味でも交響楽的、シンフォニックなロックというべきだろう。
したがって、ブラスやストリングスは物語を語る道具立てとして完全にバンドの一部となっている。
そして、その巧みなブラス、ストリングスの処理の向こうには、はっきりと THE BEATLES の面影が。
また、GENESIS に似ているのではなく、GENESIS と同じセンスをもったブリティッシュ・ロックというべきだろう。
(フィル・コリンズが歌ったらはまりそうな曲調が多いのも確かだが)
うれしいのは、THE BEACH BOYS や WINGS や ELO など、昔はごく普通に耳にできた英米ポップ・ロックと同質のポップ・テイストがたっぷりつまっていること。
また、メランコリックでメロディアスな英国ロックの端々にアメリカンな味わいが散りばめられていて意外なアクセントになっている。
耳当りのいい音ながら、アレンジには相当工夫を凝らしていると思う。
この凝り方、リード・ヴォーカルもつとめるデヴィッド・ロングトン氏は MAGENTA のロブ・リードとともにイギリスのニール・モース、またはイギリスのロイネ・ストルトという呼称がふさわしい。
プロデュースはアンディ・ポール。
アルバム・タイトルにある「English Electric」は 1970 年ごろまで存在した英国の電機メーカー(日本でいえば東芝とか日立、いや文脈からすると中島飛行機か)を示すのではないか。
であれば、米国の GE に吸収されたこともあるようなので、一種ノスタルジーの響きの強いワードなのではと推測している。
オールド・ロック・ファンには絶対のお薦め。
2 曲目や 4 曲目(北欧ロックからのフィードバックか)は新鮮。
アンディ・ティリソンをゲストに迎えた 7 曲目は大傑作。
全体に、キャッチーだがクラシカルな品のよさがあり、湿り気を保ちながらも爽やかである。
最初のリスニングで虜になり、繰り返して聴くごとに新しい発見のある作品だと思う。
ところで、デイヴ・グレゴリー先生はもう完全にメンバーなのですね。TIN SPIRITS は?
「The First Rebreather」(8:32)美しきファンタジー・ロックの新たな代表曲となりそうな傑作。
突き抜けきらないところが大人である。大人はそんなに簡単じゃない。
「Uncle Jack」(3:49)バンジョーの音色が新鮮なジャグ、スキッフルをさらりと交えた作品。
「Winchester From St Giles' Hill」(7:16)ドラムレスの繊細なアンサンブルをフィーチュアする。
GENESIS なら 「よどみ」。
「Judas Unrepentant」(7:18)
「Summoned By Bells」(9:17)ナチュラルな歌もの。R&B への憧れがすっと出てくる。
ベースは YES。
「Upon Heath」(5:39)
「A Boy In Darkness」(8:03)
「Hedgerow」(8:53)
(EERCD 011 / GEPCD1043)
Nick D'Virgilio | drums, cajon, backing vocals |
Dave Gregory | electric guitars, e-bow, marimba, electric sitar |
David Longdon | lead & backing vocals, banjo, vibraphone, shaker, flute, percussion, cutlery, glassware |
acoustic guitar, piano, organ synthesizer, accordion, dumbek, tambourine | |
Danny Manners | piano, keyboards, organ, synthesizer, double bass |
Andy Poole | keyboards, backing vocals, acoustic guitar, electric piano, bass pedal |
Gregory Spawton | bass, mandolin, Mellotron, guitars, backing vocals, acoustic guitar, organ |
2013 年発表の第八作「English Electric Part Two」。
英国ロックに脈々と流れ続けるメランコリーのエッセンスを抽出し、アコースティックな音の質感を生かして仕上げた極上のポップロック作品。
へヴィな音にまったく頼らないという点でまず十二分に個性的である。
そして、すべてをターナーの水彩画のような淡いトーンでしっとりと品よくまとめ上げている。
その音がイメージさせるのは、風に散る花びらの色であり、朝焼けの色であり、潮騒であり、カモメの鳴き声であり、汽笛であり、木枯らしの吹きすさぶ音である。
また、多彩な管弦鍵盤打楽器をピンポイントでアクセントとして使うのが非常に巧みである。
柔らかで物悲しい管楽器の響きは、「Lizard」や「Islands」期の KING CRIMSON に通じている。
ふと三人 GENESIS に寄りかかる瞬間もあるが、淡色系のメロディアスなシンフォニック・ロックという独特のポジションは確立していると思う。
あえて無理やり喩えるならば、スティーヴ・ウィンウッドによるフォーク・ロック。
音楽の要素として、クラシックとフォークはあるが、ジャズや R&B があまりない。(ジャズや R&B を呑み込んだプログレは「ある」)
CAMEL の「Snow Goose」を初めて聴き、ハードロックだけがロックではないと気づいた、少年時代の終わりごろを思い出させてくれる作品である。
プロデュースはアンディ・ポール。
アンディ・ティリソンらゲスト多数。
「East Coast Racer」()
「Swan Hunter」()
「Worked Out」()
「Leopards」()
「Keeper Of Abbeys」()
「The Permanent Way」()
「Curator Of Butterflies」()
(EERCD 012 / GEPCD1044)