Christophe Houssin | keyboards, percussion on 6 |
Patrick Jobard | guitar, chorus, charengo on 6, percussion on 6 |
Philipe Ladousse | vocals, chorus, percussion on 6, hand clap on 6 |
Jean-Christophe Lamoureux | bass, sitar on 2, tabla on 3, castanett on 6 |
Hervé Morel | drums, percussion |
guest: | |
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Charly Guillon | oboe on 5 |
Nathalie Lefebvre | concert flute on 5 |
Benoit Tremolieres | uillean pipes on 6 |
94 年発表のアルバム「La Citadelle」。
内容は、芳醇なるラテン・ポップス風シンフォニック・ロック。
音を積め込むばかりが能じゃないとばかりに、スリムなサウンドとテクニカルなリズムで華麗に決める作風であり、ヨーロピアン・スタンダード風のクラシカルでキャッチーなテーマとテクニカル・フュージョン風味を交えたナチュラルにしてトリッキーなプレイが自然に交差する、モダンな作品である。
フレンチ・ロックのイメージそのものであるヴォーカルを道案内に、めくるめくファンタジーの世界へと誘う名作である。
誤解を恐れずいうならば、高度なアンサンブルによるシンフォニックなロックという点で、もっとも近いのは YES だろう。
もはや各プレイヤーの技量はいうに及ばないが、一応眺めてみる。
キーボーディストは、リアルな重みと息を呑む美しさを備えたストリングス/ブラス系シンセサイザーと CP80 風のアコースティック・ピアノを中心にソロでもアンサンブルでも華麗きわまるプレイを放つ。
デジタル・サウンドによるクラシカルで気品ある音作りという点では、MINIMUM VITAL と同系統であり、エレガンスを体現しているのは、まずは、このキーボードのプレイだろう。
ギターは、スティーヴ・ハウはもちろん、テクニカル・フュージョンからモダンなメロディック・メタル辺りまでフレーズを広くストックしているハイグレードのオールラウンド・プレイヤーである。
メロディアスかつスリリングなプレイにクリスチャン・ベヤやジャン・ピエール・アラルサンの伝統を感じる。
スパニッシュなアコースティック・ギターもうまい。
そして、ドラムスはずばぬけてテクニカル。
手数を抑えて変拍子をはじき飛ばすように叩く辺りは、ブルフォードよりはチャド・ワカーマンか。
これだけリズムがテクニシャンだと、何をやってもさまになるだろうと納得させるプレイである。
また、ヴォーカリストも、フランス語独特の響きに加えて、アンドレ・バルゼルやクリスチャン・デキャンばりの豊かな歌唱力を見せる。もちろんコーラスも巧みだし、大陸風のエキゾチズムを感じさせる小道具やクラシカルな演出も、効果的に散りばめられている。
全体に音数はさほどでなく、一部線の細さを感じさせるところもあるが、あるべきところにしっかり音があるという意味ではほぼ完璧な楽曲/演奏である。
おおざっぱにいって、ややラテン風のフュージョンと 80 年代 YES の中間くらいのインストゥルメンタルに、室内楽風のアンサンブルとトラッド調の音/メロディでスパイスを効かせたような音楽である。
また、空間をたっぷり使った広がりのあるサウンドに加えて、テーマ、旋律の配置、アンサンブルの作り、ダイナミクスを考慮した巧みな場面構成など、作曲/アレンジも洗練されている。
静的な美と神秘、そして躍動感が交錯するすばらしいインストゥルメンタル・パートのおかげで、メロディックでキャッチーなヴォーカル・パートがいっそう耳になじみやすくなる。
まさしくかつての YES と同じ効果である。
華麗な音色、ドラマチックなカッコよさ、おしゃれなビート、はなやかなテクニックと何もかも揃った何年かに一度の大傑作。
SPOCK'S BEARD、THE FLOWER KINGS、EZRA WINSTON と並び 90 年代型シンフォニック・ロックというスタイルを提示しているような作品である。
特に、プログレ然とはしていないのにプログレの芯も外していないという幅広い音楽的カバレッジは、基盤とする音楽こそ異なるものの、SPOCK'S BEARD に匹敵すると思う。
まさしく甦る ATOLL、ANGE でありフランス・プログレの新たな究極でしょう。
タイトル曲はアコースティックな室内楽を模したエレガントな小品。
ヴォーカルはフランス語。
「La Cour Des Miracles」(11:25)
トラッド調のテーマによるほんのりエキゾチックなネオ・プログレッシヴ・チューン。
多彩な音色のキーボードとギターによる軽快なアンサンブル、ミステリアスな演出、個性的なヴォーカルは、70 年代から脈々と流れるフレンチ・ロックの流れを感じさせる。
演奏とヴォーカル表現の呼吸がすばらしくいい。
緩急自在にして変拍子も鮮やかなリズム・セクションには唖然。
これだけリズムがカッコいいと何をやってもサマになる。
「Insomnies」(9:10)エキゾチックな陰影に富む歌ものシンフォニック・チューン。
ギター、キーボード、ヴォーカルの緊密なやり取りと一体感がいい。
クラシカルなアンサンブルと躍動感あふれるインスト・パートの対比もみごと。
YES の「Drama」を思い出してしまう音です。
「Delenda Est」(6:57)巻き取るような 3 連符のフレーズが小気味よい軽快なインストゥルメンタル。
クラシカル・テイストも効かせつつ、キーボードとギターによる流れるようなインタープレイが続く。
変拍子アンサンブル含め、技巧のキレをさりげなく示す。
一押し。
「April Thème」(9:48)南欧風のエキゾチズム漂うニュー・エイジ風フュージョン。
しなやかなリズムと現代的な音質によるヴォーカル・パートと、ややジャジーなギターがリードするインスト・パート。
オーケストラ・ヒットからパーカッション、スパニッシュなギターまで、さまざまなアクセントが散りばめられている。
「La Citadlle」(2:50)ピアノ、アコースティック・ギター、オーボエそしてフルートを用いた優美な舞曲。
弦楽風のシンセサイザー。
「Postérité(Partie I & II)」(15:42)ややネオ・プログレ風のシンプルなビートによる充実の二部構成シンフォニック大作。
軽快なリズムにドライヴされる、「しっかり奏でる」シンセサイザーとギターによるプログレらしいアンサンブル。
ヴォーカルも溌剌とし、決めどころでギターが歌い上げる第一部。
IQ の一番調子のいいときすら、やや追い抜いている。
アコースティックな音を活かし THE FLOWER KINGS を思わせるハートウォームな第二部。
機微をつかんだシンセサイザー、オルガン、そして絶妙のスパイスとなっている、パイプによるケルティック・テイスト。
雄大にして優しさあふれる作品だ。
(B 27 Tiret 6)
Régis Bravi | drums, percussion | Christophe Houssin | keyboards, chorus |
Patrick Jobard | guitar, chorus | Jean-Christophe Lamoureux | bass |
guest: | |||
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Philippe Ladousse | vocals on 2 | Pierre-Yves Theurillat | vocals on 3,4 (GALAAD) |
Christian Decamps | vocals on 5 (ANGE) | Julie Vander | vocals on 6 (MAGMA) |
Cyril Grimaud | vocals on 7,8 (HAUTEVILLE) | Jean-Baptiste Ferracci | vocals on 9 (MINIMUM VITAL) |
Sonia Nédélec | vocals on 9 (MINIMUM VITAL) | Eric Kohénoff | flute on 4,9 |
Christophe Boissière | cello | Charly Guillon | oboe on 5 |
Robert Bit | bassoon on 7 |
2000 年発表の第二作「Nouveaux Mondes」。
遂に現われた続編では、リード・ヴォーカリストが脱退、ドラマーもメンバー交代した模様である。
その旧ヴォーカリスト含め、計七人のゲスト・ヴォーカルを迎えている。
内容は、前作でも見せたクラシカルなアクセントを効かせた、現代的で明確な音色をもつシンフォニック・ロックである。
切れ味鋭く少々メタリックなギターと雄大なキーボード・オーケストレーション、そしてテクニカル・フュージョン色も漂わすリズム・セクションによる演奏は、凝ったテーマを中心にした、めまぐるしくもメロディアスなものだ。
折れ曲がるような変拍子アンサンブルを、勢いを失わずに華やかに決めてゆくところが、最大の特徴である。
そして、テクニカルなプレイで押し捲るかと思えば、すっと引いてアコースティックに搦め手から攻めるといった、語り口のうまさも健在だ。
ドラムスは今回もじつに小気味いい。
そして、特にアルバム前半において、ややテクニックに走り過ぎてしまう傾向に待ったをかけているのは、個性的というにはあまりに多彩な、ヴォーカリストたちである。
変拍子や複雑なテーマでせめぎあう演奏が無表情になりそうになると、独特のフランス語調がからまってきて、その結果なんとも人間臭い不思議な響きが生まれてくるのだ。
もともといわゆるシンフォニック・ロックが多くないフランスだけに、この演出はきわめて新鮮だ。
一方 6 曲目以降後半は、終曲に至るまでテクニカルなアンサンブルへノスタルジックなアレンジ、コラールなどクラシカルな音、エキゾチックなメロディをぜいたくに放り込んで唖然とするばかりの豊穣な音楽を作っている。
この後半の曲の面白さは、近年まれに見るものだ。
前作が 70 年代プログレの最後の残り香が主であったとするならば、本作は真正ネオ・プログレッシヴ・ロックといえるだろう。
それも超ド級のテクニカル・ネオ・プログレッシヴ・ロックである。
オールド・ファンにもフュージョン・ファンにもメタル小僧連にもお薦めできます。
個人的には 6 曲目から 7 曲目の流れがすさまじく好きです。
7 曲目は THE BEATLES なのかな。
それにしてもクリスチャン・デキャンの「語り」で鳥肌立ててる私はなんなんだ。
とにかく「王道」といって間違いのない内容です。
「Hubble」(7:04)
「L'or Des Indes」(8:45)
「Voler En Éclat」(8:09)
「Les Conquérants」(3:11)
「Don Juan」(8:17)
「Atomik」(5:52)
「Alexandre」(9:49)
「My Only Quest」(4:33)
「Cathédrale」(10:44)
(FGBG4340.AR)