チェコのジャズロック・グループ「ENERGIT」。 72 年結成。他のチェコのバンドと同じく政府の弾圧下、地下活動を続ける。バンドの母体はブラス・ハードロックの FLAMENGO につながる。作品は二枚。
Lubos Andrst | guitar |
Emil Viklicky | electric & acoustic piano, moog |
Rudolf Tichacek | soprano sax |
Jan Vytrhlik | bass |
Jiri Tomek | conga on 1,5 |
Josef Vejvoda | drums on 1,5 |
Karel Jencik | drums on 2 |
Anatoli Kohout | drums on 3,4 |
75 年発表のアルバム「Energit」。
内容は、電化マイルス以降、最初期 WEATHER REPORT 、RETURN TO FOREVER、MAHAVISHNU ORCHESTRA、そして SOFT MACHINE、NUCLEUS らと同系統のクロスオーヴァー/ジャズロックにエキゾチズムのスパイスを効かせたもの。
ライトなファンク感覚のあるリズム・セクション、軽快なローズ・ピアノ、ピッチベンドの利いたシンセサイザー、ジャジーなソプラノ・サックス、けたたましくワイルドなギターらが挑発しあいながら構成するパフォーマンスは、典型的なクロスオーヴァー、ジャズロックといえるだろう。
ゆったりとしたアルペジオに不気味な重みのあるギタリストはマクラフリン型(じつはそんなにテクニカルなわけではないが、クラシカルかつブルージーなニュアンスのある表現がすばらしくいい)、華麗なエレピとシンセサイザー捌きを見せるキーボーディストはコリア/ハマー型、サックスだけはショーターというよりはエルトン・ディーン/コルトレーン型か。
同時期のマイルス・ディヴィスほど脂っこくはないが、パーカッションによるグラインドするようなグルーヴもある。
そして、スペイシーにして内向きの強い切迫感がある演奏をエキゾティックでスケールの大きなロマンチシズムが貫いている。
一方、変拍子のリフでドライヴするハードな演奏とともに 70 年代中盤らしいリラックスしたメローな表現もしっかりとこなしている。
MAHAVISHNU ORCHESTRA の第一作に通じる圧しかかるようなアンサンブルとウエスト・コースト風のさわやかタッチがごく自然に並んでいる。
そして、メロディアスな表現の品質が高い分、ダークでスリリングな演奏がまたいっそう映える。
腕自慢のジャズ・ミュージシャンの集合体らしく、エレクトリックなサウンドに頼らないアコースティックなコンボでの表現も一流である。
特に、キーボードとギターの絡みは、FERMATA に勝るとも取らない味わいだ。
クロスオーヴァー/ジャズロックの王道作品。
CD には、EP から 2 曲、編集盤から 1 曲、ライヴ録音 3 曲のボーナス・トラックが 6 曲ついている。
特に、後半の 74 年のライヴ録音がカッコいい。
「Ráno (Part I.) 」(17:30)電化マイルス直系王道クロスオーヴァー。重厚でカッコいいです。
「Paprsek Ranního Slunce」(4:53)やおら西海岸風のリラックスしたフュージョン・テイストが強まる。
「Noční Motýl」(7:45)ロマンティックなピアノのリードするバラードからミドルテンポでギターとシンセサイザー、エレピがせめぎあうジャズロックへ。
「Apoteóza」(2:51)MAHAVISHNU ORCHESTRA そのものな小品。シンセサイザーが冴える。
「Ráno (Part II.)」(4:00)古代エジプトの典礼のように重厚かつ大仰。
以下ボーナス・トラック。
「Zeleneý Satén」(5:46)EP 「Mini Jazz Klub č 6」より。
「Soumrak」(6:16)EP 「Mini Jazz Klub č 6」より。
「Superstimulátor」(12:26)LP「Jazzrocková Dílna 2」より。
「Ráno (Part II.) - Noční Motýl」(6:48)ライヴ録音。
「Flying」(3:47)ライヴ録音。
「Ráno (Part I.) 」(6:59)ライヴ録音。
(Supraphon 1 13 1787 / MAM626-2)
Lubos Andrst | guitar | Karel Jencik | drums on 13 |
Milan Svoboda | keyboards | Rudolf Tichacek | sax |
Jan Vytrhlik | bass | Jaromir Helesic | drums |
Ivan Khunt | vocals on 8-12 | Vladimir Padrunek | bass on 8-13 |
Jaroslav "Emo" Sedivy | drums | Vladimir Misik | vocals on 13 |
guest: | |||
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Michal Gera | trumpet | Zdenek Zahalka | trumpet |
Bohuslav Volf | trombone | Jiri Tomek | conga |
78 年発表のアルバム「Piknik」。
クロスオーヴァーにややファンク色が出、メローなフュージョン・タッチも現れた第二作。
この印象の違いは、主としてギタリストのプレイ・スタイルが変わったせいだろう。
大雑把にいうと、マクラフリンからデメオラになった、つまり、ゴリゴリの無茶さ加減がなくなった。
アコースティック・ギターのテンション・コードやトライトーンによる神秘的でロマンティックな表現も盛り込まれている。
また、管楽器セクションをフィーチュアするところでも、ストレートにグルーヴィでファンキーな演奏になっている。
5 曲目のようにヒノテルかタイガー大越ばりのトランペットが高鳴る場面では、ELEVENTH HOUSE のイメージに迫る。
西海岸の R&B 風味のあるジャズ・グループ、たとえば LARSEN FEITEN BAND 辺りを思い出させるところも多い。
一方、メンバー交代したらしいキーボーディストだが、エレピの演奏などを聴く限り、やや軽め、おとなしめではあるが前任者と似たスタイルである。
時おり、たなびく霞のように現れるストリングス・シンセサイザーが印象的だ。
また、レゾナンスを効かせた軽めのシンセサイザー・ソロも 70 年代中後半という時代を感じさせるものだ。
もっとも、ドラムスは両本家ほどはエゲつなくない。
また、前作よりも全体にパーカッションの効きがいい気がする。
4 曲目は、メローにして幾何学的な ISOTOPE 風の作品。サックスはすっかりウェイン・ショーターである。
6 曲目は、安定したクルージングを見せるカッコいい作品。
7 曲目は、再びブラスをフィーチュアしたアッパーなノリが痛快な作品。
アルバム全体としては前作のスケール感や決め手は欠くものの、ファンキー馬鹿フュージョンとは一線画すスリリングで神秘的なフュージョンである。
CD にはボーナス・トラックが 6 曲付く。
ギタリストはなかなか器用であり、8 曲目のボーナス・トラックではジェフ・ベックそのもののようなプレイを聞かせる。
「Drift」(6:29)
「Stratus」(4:20)
「Jarní Rovnodennost」(3:45)
「Mobilis In Mobili」(3:53)
「Zapomenutý Ostrov」(7:58)
「Říční Písek」(4:25)
「Piknik」(6:32)
以下 CD ボーナス・トラック。
「Blue Dance」(5:06)
「Freedom」(9:08)
「Loneliness」(3:30)
「Crazy Rock」(1:44)
「Mexico」(6:57)
「Blue Dance」(3:44)
(Panton 11 0695 / MAM626-2)