イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「ERIS PLUVIA」。 85 年結成。作品は四枚。 管楽器奏者は FINISTERRE にも参加。 2019 年新譜「Tales From Another Time」ですでに再結成後三作目。分派プロジェクト「ANCIENT VEIL」も 2018 年新譜発表。
Marco Forella | bass, piano, acoustic guitar, keyboards, drums, percussion |
Roberta Piras | flute |
Alessandro Cavatorti | guitars |
Roberto Minniti | vocals |
2016 年発表のアルバム「Different Earths」。第三作。
内容はフルートとエレアコ・ギターをフィーチュアした癒しのクラシカル・メロディアス・ロック。
クラシカルでもクラシックではなく、哀愁はあってもフォークではなく、ビートを効かせてもロックっぽさはさほどは前面に出ない。
ミドル・テンポの切々と訴えかけるもメッセージには熱っぽさよりもふわふわとした穏やかな響きがある。
ブルーズやガレージで荒っぽくも切実なメッセージを伝えていたロックがこんなに優しくなったのだ。
クラシカルな、室内楽風の場面ではフルートはもちろん木管楽器風のキーボードの雅な音がいい。
フルートの暖かみのある調べが CAMEL を思わせることも。
エレクトリック・ギターはネオ・プログレッシヴ・ロック本流というべきエコーとサスティンを効かせたメロディアスなプレイが主でありで、出番ではきっちりと存在感を放つ。
(なぜか 4 曲目だけは変拍子のヘヴィなリフやワウワウのプレイを放っていて MARILLION、あるいは PINK FLOYD 風)
たまに現れるハモンド・オルガンなどからも想像できるように、リーダー格のベーシスト兼何でも屋さんのプログレ指向がグループを引っ張っているようだ。
ネオ・プログレッシヴ・ロックの DNA というべき GENESIS 直系なところももちろんある。
それでも、トータルではアコースティックなイメージのあるヒーリング・ロックというべきだろう。
ヴォーカルは英語。
「Renaissance (The Door Of My Soul Reprise)」(3:23)
「Man On A Rope」(5:58)
「Aqua」(4:11)
「Rain Is Falling」(5:13)
「Poet’s Island」(4:47)終盤のまったり感が半端ない。
「Black Rainbow」(4:48)
「Heroes Of The Dark Star」(10:13)ファンタジックな GENESIS 風オールド・プログレ。
「Springtime Drop」(3:26)
「The Door Of My Soul」(6:09)しみじみとした佳曲。静かな力強さもある。
(AMS 276 CD)
Alessandro Serri | voice, guitars, flute |
Paolo Raciti | piano, keyboards |
Edmondo Romano | recorder flute, saxophone, backing vocals |
Marco Forella | bass, acoustic guitar |
Martino Murtas | drums, percussion |
guest: | |
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Valeria Caucino | vocals on 1-c |
Enrico Paparella | acoustic guitar on 3 |
Alessandro Cavatorti | acoustic guitar on 4 |
Sabrina Quarelli | violin on 4, 7 |
91 年発表のアルバム「Rings Of Earthly Light」。
内容は、リコーダー、サックスをフィーチュアした、爽やかで健やかなるシンフォニック・ロック。
リコーダーやヴォーカルのトラッド風の旋律にうっすらとした哀感が漂うものの、悲劇に高まる前に、あたかも雲間から光がさすように現世の救済が訪れてほっと安堵の息をつける、そんなイメージの音である。
一方、サックスとギターは、しなやかさと現世的なたくましさを表現している。
したがって、サウンドは、心地よい清涼感と匂いたつような気品、健康的な明るさにあふれている。
清涼感は主としてフュージョン・タッチの和声と音色により、気品はリコーダーの喚起する中世音楽のイメージからくるのだろう。
控えめでアトモスフェリックなキーボードやアコースティック・ギター、ノーブルなヴォーカルなど、ニューエイジ風の淡い色調なところが多いが、サックスが弾みをつけるのに加えて、エレキギターやリズム・セクションがしっかり音を出してロックの逞しさをアピールしている。
したがって、決して癒し一辺倒ではない。
ドラムスなどかなりサービス精神旺盛というべきだ。
全体に、ネオ・プログレ的なファンタジー路線にはさほど傾斜しておらず、溌剌とした涼やかな官能をもつ音である。
変拍子による独特の軋み/跳躍感やデリケートな翳りのあるアコースティック・アンサンブルには GENESIS の姿が、そして、メル・コリンズ風のサックスとギターがリードするジャジーな演奏には CAMEL の姿が思い浮かぶ。
結論として、バロック調とニューエイジ風の清涼感、ジャジーなグルーヴが一体となった、淡い色調ながらも個性的な作風といえる。
ギターは、オールド・ファン向きの何気ないプレイをしているが、JADIS のゲイリー・チャンドラーと同じく、豊かな表現力を持つ技巧派である。
そして、リコーダーのたおやかなさえずり。
この音色と表情にも魅せられる佳品だ。
反面、音色ほどには、印象的なメロディがないのが唯一の弱点。
ヴォーカルは英語。
元々はカセットオンリーの自主制作盤だったらしい。
「Rings Of Earthly Light」(17:12)五部からなる組曲。リコーダーの CAMEL という感じ。第三部の女性ヴォーカルが印象的。最後までよどみなく流れる佳品である。
「In The Rising Mist」(4:26)ドラムレスの夢見るような SSW タッチの佳作。
さんざめくアコースティック・ギターは GENESIS 的といえなくもないが、素朴なリコーダーの響きのせいか、よりフォーク調に感じられる。
「The Broken Path」(1:32)変拍子のリフがドライヴするハードなアンサンブル。
「Rain Dances」CAMEL のイメージだが、クライマックスだけ取り出したようにすぐ終わってしまう。
「Glares Of Mind」(3:56)フルート、控えめなアコースティック・ギター、フレットレス・ベースらによる哀愁のアンサンブル。リコーダーの調べに酔う。
名曲です。
「Pushing Together」(4:40)GENESIS にジャジーな和声を加えたようなメロディアス・チューン。AOR っぽさもあるが、悪くない。
「You'll Become Rain」(2:14)
「The Way Home」(9:17)最も躍動感のある、ロックらしさを強調した作品。もちろん、ワールド・ミュージック調などのしかけはある。
GENESIS と CAMEL が交互に現れる。
(FGBG 4048AR)
Alessandro Serri | voice, guitars, flute |
Edmondo Romano | recorder flute, saxophone, backing vocals |
95 年発表のアルバム「The Ancient Veil」。
グループは活動停止、それに先立って脱退していたギタリスト兼ヴォーカリストと管楽器奏者がユニット(どちらかというとグループそのものではなく分派プロジェクトという位置づけになるようだ)を組み、本作品を発表した。
ベース、キーボード、ドラムス、弦楽らは、すべてゲスト奏者である。
音楽の内容は、慈しむようなリコーダーの響きと女性的ななよやかさのある男性ヴォーカルを活かした癒しのクラシカル・アコースティック・ロック。
いわば、元気めのニューエイジ・ミュージック路線であり、ERIS PULVIA の作風の継承/発展系である。
その表現方法は、古楽やクラシック風のアンサンブル、フォーク・ソング、軽快なフュージョン調まで多彩だ。
さりげない変拍子はもはやネオ・プログレ系のお作法なのだろう。
残念ながら、バンド演奏においては、エレキギターが趣味的なプレイに走り気味であり、リズムもやや平板。(打ち込みの可能性もある)
それと比べると、管弦楽を仕込んだアコースティックな演奏の水準は高い。
ヴォーカルとの相性もこちらのほうが若干いいようだ。
歌ものやアコースティックな演奏パートは、70 年代の英国フォーク・ロック、トラッド・リヴァイヴァルを思わせるところも多い。
サイケデリック・フォークの FOREST や MAGNA CARTA、よりアナーキーな INCREDIBLE STRING BAND さらには古楽プログレの GRYPHON にまで連想は及ぶ。
エレクトリックなサウンドによる演奏はモダンなネオ・プログレ調だが、そこでも、メロディアスというよりはリズミカルで素朴な味わいが勝るところがユニークである。
英国ポンプ勢でいえば、SOLSTICE、他の国ならスペインの GALADRIEL やフランスの MINIMUM VITAL に近い素朴でつややか、デリケートな音である。
多彩を越えてややとっ散らかった内容ではあるが、音楽の中心にあるリコーダーの音にしっかりついてゆけば万華鏡のような音の紋様を楽しめるだろう。
4 曲目は、英国フォークをなぞった味わいある力作。
5 曲目は、ゲストによる超絶的なギター・プレイをフィーチュアしたフュージョン。
メインストリーム・フュージョンに古楽風のリコーダーが交差するおもしろい作品である。
10 曲目は、ノーブルなヴォイスがようやく正しい居場所を見つけた優美な作品。
オーボエも美しい。
ヴォーカルはやや訛った英語。
「Ancient Veil」(7:09)
「Flying」(3:11)
「Feast Of The Puppets」(2:08)インストゥルメンタル。
「Creature Of The Lake」(4:17)名品。歌詞は御伽噺風。
「Gleam」(4:15)インストゥルメンタル。オーボエ、ソプラノ・サックス、エレアコ・ギターをフィーチュア。古楽フュージョン。
「Walking Around」(1:25)民謡風の混声合唱。
「The Dance Of The Elves」(1:52)インストゥルメンタル。タイトルからして、という感じです。
「You'll Become Rain Pt. II」(2:08)弦楽四重奏。
「Can You Feel Me?」(4:05)
「Dance Around My Slow Time」(5:25)オーボエ、ソプラノ・サックスに抜群の存在感あり。
「Night Thoughts」(7:13)安定感のあるメロディアス・ロック。
「Landscape And Two」(4:36)南米の民族楽器である横笛による独奏。一人 JADE WARRIOR。
「New」(2:45)
「Talking Frame」(8:27)
(MMP 280)
Alessandro Cavatorti | guitars |
Marco Forella | bass |
Matteo Noli | vocals, guitars |
Paolo Raciti | piano, keyboards |
Daviano Rotella | drums |
guest: | |
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Roberta Piras | flute on 1,2,4,6,8, vocals on 1 |
Diana Dallera | vocals on 1,6 |
Max Martorana | classical guitar on 1,9 |
2010 年発表のアルバム「Third Eye Light」。
ひさしぶりの新譜であり、グループ名義での第二作。。オリジナル・メンバーは、鍵盤奏者とベーシストのみ。
内容は、清潔で透明感があり、なおかつうっすらとした幻想性のあるメロディアス・シンフォニック・ロック。
イタリアン・ロックらしい素朴な牧歌調に加えて、CAMEL ら叙情派英国ロックから現代ポーランドのシンフォニック・ロック勢にダイレクトにつながる湿り気と重さがあり、さらには現代的な洗練されたタッチもある。
憂鬱さもあるが、まず第一印象は、女性的な優美さ、たおやかさだろう。
主役はよく歌いむせび泣くギターとフルート。
リリカルなシーンから悠然と包容力をアピールするシーンまでを多彩な表現とサウンドで紡いでいる。
ギターは、今風のトリッキーなプレイから KERRS PINK ばりの情感豊かなハーモニーまで、楽器の魅力を十分に引き出して、よく歌っている。
スイープも抜群なのに昔のハードロックのようなリフもためらいなくぶちかますところがよく、重くなりすぎないところにセンスを感じる。
また、フルートは本家の CAMEL 同様切々たる叙情面の演出を一手に引き受けている。
びっくりするほどドライヴ感たっぷりにかっ飛ばすところは HR/HM ファン向け、というよりはこれが現代ロックのスタイルなのだろう。
もちろん、そういったロックらしさを意外なまでにさまざまな音が取り巻くのがプログレの醍醐味であり、本作品でもサイケデリックでけたたましいロックと、可憐なフルートがさえずり、弦楽やピアノが切々と音を紡いでゆく本格的なクラシック・アンサンブルがみごとに調和して一つの風景に描かれている。
表現の振れ幅の大きさはかなりのものであり、音の絵巻物としてのスケールは大きい。
フェード・アウトが多いのが気になるが、聴き応えという点では文句はない。
ベテランなので当然なのかもしれないが、90 年代、雨後の筍のように現れたポスト・ポンプのグループらと比べると、演奏、サウンドともに一つも二つも格上である。
もはや前作での匂い立つような美感すらも、本作品においては魅力の一面に過ぎなくなっている。
ヴォーカルは(巻き舌でやや訛った)英語。一部でコケットな女性ヴォーカル、コーラスもフィーチュア。
「Third Eye Light」(6:32)ギターがよく歌うメロディアス・チューン。往年のニューエイジ・ミュージック風味もあり。
「Rain Street 19」(6:10)アコースティック・ギターのアルペジオとフルートの調べ。みごとすぎる典型。英国ロックのウェットさをよく消化。
「The Darkness Gleams」(4:29)ミステリアスなシンフォニック・チューン。孤独に苛まれた憂鬱の果てに走り出す。
PINK FLOYD に端を発し、ドイツ、東欧に広まった陰鬱系メロディアス・ロック。
「Someone Care For Us」(3:22)ピアノ、ストリングス、フルートによるヘヴンリーな作品。このグループのイメージにぴったり。
「Fixed Course」(2:45)やや唐突なヘヴィ・チューン。往年の毛深いイタリアン・ハードロックをジャジーなセンスで包み込む。
「Peggy」(6:01)感傷的な弾き語りから、女声が加わり、相聞歌へ。
「Shades」(5:02)ほんのり東洋的な趣もあるファンタジックなメロディアス・ロック・インストゥルメンタル。
英国勢でいえば SOLSTICE だろう。
「Fellow Of Trip」(5:23)典型的な英国-ポーランド系薄暗メロディアス・チューン。やはり PINK FLOYD は好きそう。
「Sing The Sound Of My Fears」(4:30)ストリングスとギターのアルペジオをフィーチュアしたクラシカルな挽歌。
(AMS 185 CD)