アメリカのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「DISCIPLINE」。 87 年結成。 伊福部昭に影響を受けた卓越したヴォーカリスト、マシュー・パーメンタをフィーチュアした、ダークなお化粧演劇プログレ。 2017 年新作「Captives of the Wine Dark Sea」発表。
Paul Dzendzel | drums |
Chris Herlin | lead & rhythym guitars |
Mathew Kennedy | bass |
Matthew Parmenter | vocals, keyboards, violin, rhythm & acoustic guitars, ebow, tambourine |
guest: | |
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Henry Parmenter | cowbell & maracas on 5 |
2017 年発表の第五作「Captives Of The Wine Dark Sea」。
ギタリスト交代(旧メンバーにサンクス・クレジットあり)。
内容は、英国流の軽妙なポップ・テイストを交え、独特の猥雑さから暗闇が垣間見える個性派メロディアス・オルタナティヴ・ロック。
深刻さ(冒頭のアカペラの険しさは ART BEARS ばり)の果てのねじれ具合、もう一歩で滑稽になりそうな危うさが、後期 VAN DER GRAAF GENERATOR によく似ている。
(この最初の一声から感じられるウェットな粘り気は間違いなく英国ロックのエッセンスであり、これは優れたアメリカン・プログレのすべてのアーティストに共通する)
リフやテーマのセンスも抜群である。
親しみやすくナイーヴなメロディが現れるのに、素直に受け止めていいのかどうか自信がもてないのは、豹変することがこのグループの作風の一つだから当然である。
それと比すると、グラムとニューウェーヴに大して差がないのと同じで、2 曲目序盤のような 80 年代英国風のスタイリッシュなデカダンスの方が応じやすい。
テーマやリフにおいて大仰なのに重厚さよりも傾いだような不自然さが強調されるのも特徴である。
また、無闇にアッパーな上に、はみ出したいときの勢いが分かりやすくキチガイ(なぜか漢字の IME 登録がない)じみていて、じつにいい感じなのだ。
この一種明快な乱心調は 70 年代プログレの特徴のマイナーな一つであり、そこを継承している点では、本作は稀有の存在となる。
ピーター・ハミルに傾倒するパーメンタ氏も自らの中のリキ・ネイディアを曝したかったようだ。
もちろん、基本的なメロディ・センス、語り口の巧みさはいうまでもない。
そして、危ういアングラ弾き語りのテイストも健在。
新ギタリストはざわつくような粘り気が身上のようであり、堅実なバッキングと朴訥なポルタメントによるレガートなプレイが光る。
キーボードは要所でダークな主張を繰り広げ、プログレッシヴ・ロック面を支える。
ECHOLYN ばりのリズムのキレも新鮮であり、プログレではなく個性的なアメリカン・ロックという文脈でとらえることも十分可能な作品だと思う。
もちろん、一体感あるアンサンブルでヴォーカルが存在感を放つヘヴィ・シンフォニック・ロックとしても逸品である。
アメリカの VdGG といってももういいでしょう。
プロデュースはマシュー・パーメンタ。
「The Body Yearns」(9:24)
「Life Imitates Art」(4:18)VdGG に倣う名曲。
「S」(4:10)ヴァイオリンを交えた切迫感の強いインストゥルメンタル。強いていえば KING CRIMSON 系でしょうか。
「Love Songs」(3:41)
「Here There Is No Soul」(3:19)
「The Roaring Game」(6:10)テクニカルでエモーショナルだがフュージョンでも HM/HR でもないインストゥルメンタル。力作。
「Burn The Fire Upon The Rocks」(14:30)
(LE 1079)
Matthew Parmenter | vocals, backing guitar, violin, programming, tambourine, recorder, synth |
Jon Preston Bouda | lead guitar, backing vocals |
Mathew Kennedy | bass |
Paul Dzendzel | drums, percussion |
David Krofchok | piano, organ, synth, backing vocas |
93 年発表の第一作「Push & Profit」。
内容は、妖艶なヴォーカルと余裕の演奏力が抑えの効いた表現を見せる、アメリカ東海岸流の耽美派シンフォニック・ロック。
ユニークなのは、グロテスクな歌詞をささやくヴォーカルを前面に出したダーク・チューンの基調が、フォーク風であるところだ。
そして、一部プログレな音使いとキャッチーなメロディ/調子を交ぜ合わせたようなところもあり、全体としては暗い印象ながらポップな味わいもある。
この点は SPOCK'S BEARD や ECHOLYN と同様、アメリカン・ロックらしいセンスのいい雑食性をイメージしていただきたい。
作曲の中心と思われるヴォーカリストは、デフォルメを効かせた演劇風のスタイルに頼るだけではない、ピーター・ハミルのような本格的な歌唱力をもつ。
おそらく SSW 畑出身かブライアン・ウィルソンのファンではないだろうか。
演奏はギターを中心にきわめて安定感があり、バランスもいい。
控え目でデリケートな表現を用いて、巧みに曲想を浮かび上がらせている。
「Brave」辺りの MARILLION とテクニカル・メタル系のグループのバラードを合わせたような作風に、アメリカン・オルタナティヴの土の香りを一振り加えたようなイメージといえばいいだろう。
歌とともに静々と盛り上がってゆくうちに、ふと粘着性の音にがっちりと絡め取られている自分に気づく。
ヴァイオリンやピアノなどのアクセントも非常にいい。
しかし本作最大の問題点が 4 曲目にある。
サウンドこそメロトロン・フルートを思わせるシンセサイザーが切れ切れに漂う、フォーク・タッチのヴォーカル・ナンバーだが、歌詞内容は尋常ではない。
テーマは、未成年に対するセクシャル・アビュースメントである。
現代社会の悪魔である性犯罪者に扮したヴォーカリストが、7 歳の子供に向けて執拗な愛を語るのだ。
かつて GENESIS が得意とした、寓話にひそむグロテスクな面を誇張した妄想と怪奇の歌詞には、ともすれば建前と綺麗事に終始する現実に対して立つ、カウンター・カルチャーとしてのロックらしい気負いと熱意が感じられた。
しかし、本作の生まれた現代は、どうやら既にカウンターを生み出すこともできないほど病んでいるらしい。
どういうスタンスでこの歌詞を書いたのかは定かでないが、この内容が、現代社会生活の描写の一つであることは否定できない。
あまり正視したくはないが、エンタテインメント/芸術としての音楽における、歌詞の意味を問い直すような挑戦的な試みであるのも確かだろう。
確かに、黒人音楽のようにダイレクトに SEX を描く作品はあるし、猟奇、性倒錯などに言及したグループ(古くはルー・リードなど)もたくさんあるだろう。
しかし、そういう素材を取り込んでいるロックの言葉の中においても、この 4 曲目の内容はきわめて異質ではないだろうか。
(私の解釈の間違いの可能性もありますので、ぜひ一度歌詞に目を通していただきたいと思います)
やや少女漫画風の耽美路線と何気ないポップさのうちに、タブーを無視するような大胆な歌詞を交えた問題作。
これでヘタなら何にもなりませんが、演奏がうまいだけに、この居心地の悪さをなんとかしてほしい。
「Diminished」(7:36)
「The Reasoning Wall」(7:22)
「Carmilla」(9:39)
「The Nursery Year」(5:18)
「Faces Of The Petty」(4:47)
「Systems」(7:26)AOR 風の傑作。
「Blueprint」(6:02)叙情的なインストゥルメンタルの傑作。
「America」(7:42)アコースティックなオルタナティヴ・ロック。
変わったコード進行が特徴的。タイトルに気合を感じる。
(128764-01)
Matthew Parmenter | vocals, keyboards, violin, alto sax, orchestra chimes |
Jon Preston Bouda | electric & acoustic guitars |
Mathew Kennedy | bass |
Paul Dzendzel | drums, percussion |
97 年発表の第二作「Unfolded Like Staircase」。
デリケートな表現とハードな表現の間にダイナミックな振幅が生まれ、耽美派シンフォニック・ロックとしてのトータル・イメージも明快になった。
楽曲は変幻自在にスケール・アップし、個性的な内容で充実している。
抑制の効いた品のあるタッチで妖しい世界を描いて、静かに湧き上がるような興奮を呼び覚ますスタイルはそのままに、ロックとしての迫力が格段と増したといえるだろう。
いわば、VAN DER GRAAF GENERATOR な GENESIS である。
(ちなみに、本作の謝辞で ANEKDOTEN のメンバーに宛てて、VdGG とピーター・ハミルを紹介してくれてありがとう、とある)
エコーを抑えたヴォーカルには、ゆるぎない自信が感じられる。
とにかくプログレとしての分りやすさが圧巻なのだ。
演奏では、モダンなプレイも軽々こなしそうなテクニシャンのギターによるメロディアスなソロが一際輝く。
キーボーディストの脱退を補うかのように、キーボードの音数やサックス、ヴァイオリンなどのアクセントも増えている。
変拍子を大胆に交えたアンサンブルも、冴えたメロディを伴った独特の空気の中でこそ「自然な歪さ」を発揮して映えるのだ。
ただしあまりに「こわいぞ、こわいぞ」と威かし調が続くので、くたびれてしまうのも事実。
音はヘヴィだが決してゴシック・メタルではなく、あくまでハードなシンフォニック・プログレである。
そして、エレクトリックなサウンドを駆使しても、常に弾き語りの質感を持ち続けているところが、このグループの個性だ。
大作「Crutches」は、妖しくも印象的なテーマを中心にメロトロン・ストリングスを動員した力作。
超大作「Into The Dream」は、KING CRIMSON への思いが感じられる重厚な作品。
CRIMSON 調のヘヴィでアヴァンギャルドなタッチに、本来の持ち味であるメロディアスで伸びやかな歌唱が顔をのぞかせるおかげで、世界がさらに広がっている。
傑作といえるだろう。
二部から成る「Before The Strom」は前半が VdGG、後半は「Red」CRIMSON。
現代アメリカのプログレッシヴ・ロックを代表する傑作の一つ。
「Canto IV (Limbo) 」(13:45)
「Crutches」(13:11)
「Into The Dream」(22:03)
「Before The Strom」(5:20+10:31)
(Strung Out Records)
Matthew Parmenter | vocals, keyboards |
Jon Preston Bouda | guitar |
Mathew Kennedy | bass |
Paul Dzendzel | drums |
99 年発表の第三作「DISCIPLINE Live Into The Dream」。
メリーランド州ボルチモアでのライヴ・アルバム。
一曲を除いて既発のアルバムから選曲されている
リード・ヴォーカルがキーボーディストを兼任するが、演奏上の問題はまったく無い。というか、歌いながらもかなり達者な鍵盤捌きを披露している。
クリアでまとまりのある録音は、いわゆるライヴ盤の意外性の面白みには欠けるものの、このグループの音楽には合っている。(ギタリストはなかなかの腕前)
ヴォーカリストは、ピーター・ハミルや GNIDROLOG のコリン・ゴウルディングを思わせる、ナルシズムあふれる本格派。
演奏はバランスこそいいが比較的おとなしめなので、演奏パフォーマンスをリードするのは、この卓越した表現力を持つヴォーカリストである。
グロテスクと悲哀、疎外感と耽美な官能、絶望と救済、狂気と浄化などなど、すべてが病的でとにかく気持ち悪いが目が離せない。
スリーヴに綴られた神経症的ホラー小文は、GENESIS のライヴ盤に倣っているのでしょうか。
ベスト・アルバムとしてもお薦め。
メロトロンもしっかり鳴っている。
「Crutches」第二作より。英語の ANGE または少し気の触れたピーター・ハミル。強引にねじ伏せるような曲展開もいい。代表曲。
「The Nursery Year」第一作より。「I'll find you ...」おぞましき囁き。邪念を昇華し、病的な自己肯定へと辿りついた現代の「Nursery Cryme」。
「Canto IV (Limbo)」第二作より。
MARILLION、IQ、TWELFTH NIGHT といったポンプ、ネオ・プログレ系ど真ん中にある作風。
ヴォーカルを中心に表現力はピカ一。嫌いな人は大キライでしょう。
「Carmilla」第一作より。
「Systems」第一作より。
「Into The Dream」第二作より。
「Between Me And The End」新作?
(SOR 6803)
Matthew Parmenter | vocals, et cetera |
Mathew Kennedy | bass |
2004 年発表の作品「Astray」。
DISCIPLINE の中心人物マシュー・パーメンタのソロ作品。
その内容は、70 年代プログレ的な音を加味した、内省的な弾き語りフォークである。
薄暗く、絶望と隣り合わせの世界ではあるが、この人はおそらく音楽に愛されている。
きわめて多彩な音楽性があり、それらを個性が貫いていて、さらに自然な聴きごこちがある。
20 年早く生まれていたら、Donovan やブライアン・ウィルソンに迫ったかもしれない。
ピーター・ハミル と比するものもあるかもしれないが、声質や表現方法といったスタイル的なものはともかく、器用さでは遥かに勝る。
または、初期 PINK FLOYD の雰囲気をずっと一人で持ちつづけている、といってもいいだろう。
ギターからキーボードまですべてをこなしているが、当然ながら、主役はあくまで歌である。
デリケートな響きが、耽美にして力強いシンフォニック・ロックへと昇華する瞬間も多い。
何より全体に歌がよく、メロトロンは決め所で急所に突き刺さってくる。
3 曲目「dirty mind」は、ジャジーにスイングしながら自虐的な歌を諦めきったようにささやく佳曲。
4 曲目「another vision」は、サウンド、転調のパターンなど初期 PINK FLOYD 風味のある傑作。英国ロック・ファン向け。ハミルのソロ作風でもある。
5 曲目「some fear growing old」は、アメリカン・オルタナティヴ・フォーク。つまりボブ・ディラン。当然のように弦楽器が使われている。
6 曲目「between me and the end」は、ややゴシックなムードのピアノ弾き語り。粘りつくような、狂気を封じ込めたような、それでいてつややかなヴォーカル表現が冴える。サックスをフィーチュア。DISCIPLINE の世界に近い。
最終曲「modern times」は、感動のスペクタクル。
(SOR 6804)
Matthew Parmenter | written, performed, recorded |
2008 年発表の作品「Horror Express」。
マシュー・パーメンタのソロ第二作。
基本はピアノ弾き語りだが、音楽総体として VAN DER GRAAF GENERATOR(または初期 ピーター・ハミル)の世界に迫っている。
ピアノ弾き語りをドラムスとオルガンが支える第一曲だけで、この強固な世界へと否応なく引きずりこまれる。
心を病むヴォーカルに古式ゆかしいチェロとピアノが絡みつき、メロトロン・ストリングスがズルズルと渦を巻き始めると、エドガー・アラン・ポーの悪夢の世界が広がる。
アルバムのテーマはいうまでもなく「モンスター」。
「Kaiju」というタイトルの曲(ANEKDOTEN、ANGLAGARD 以来久しぶりに出会った慟哭のメロトロン・チューン)やジャケットのイメージなど、2008 年初頭に盛り上がった「Cloverfield - Hakaisha」を連想させるところがある。
10 分あまりの大作「Polly New」は、キャッチーなポップスとシリアスな器楽をつなぎ合わせた野心作。
今回も、妄想の果て、メロディと歌唱は冴えわたる。
思い切りスタイリッシュな表現や個性的なポップ・テイストもたっぷり披露している。
力作。
個人的に 2008 年ベスト 5 の一つ。
「In The Dark」(9:22)説得力あるパフォーマンスによる傑作。
「O Cesare」(3:41)メロトロンとスキャット。
「Escape Into The Future」(4:47)デヴィッド・ボウイ的なチープなポップ・センスで迫る怪曲。一人宅録の練習か。
「Kaiju」(3:51)インストゥルメンタル。傑作。
「Snug Bottom Flute And Starveling」(3:41)変拍子ピアノ・ソナタ、いや協奏曲。インストゥルメンタル。
「Golden Child」(3:51)後期 KING CRIMSON 的ミニマリズムを活かした作品。歌詞は繰り返しのみ。
「Monsters From The Id」(7:53)オールド・オルガン・ロック。「イドの怪物」は古い SF 映画「禁断の惑星」に出現した怪獣。
「Polly New」(10:07)
「All Done (Horror Express) 」(7:19)
「The Cutting Room」(5:41)キャッチーなロックンロールを怪奇にアレンジした、アメリカン・ホラー・ムーヴィー・タッチの作品。傑作。
(SOR 6806)
Matthew Parmenter | vocals, keyboards, descants |
Jon Preston Bouda | guitars |
Mathew Kennedy | bass |
Paul Dzendzel | skins, percussion |
2011 年発表の第四作「To Shatter All Accord」。
久しぶりの新作は、独特の不気味なパフォーマンスをみせるヴォーカリストの歌唱を中心にしたハードロック調のへヴィ・シンフォニック・ロック。
特徴は、ロック的な疾走感や重量感の向こうに弾き語りフォークのテイストがあること。
空隙のある音が狂おしさを沸き立たせるという巧みの技であり、VAN DER GRAAF GENERATOR に通じる世界である。
へヴィなサウンドをリードするギターのポルタメントとフィードバックには、凶暴さだけではない表現の機微があり、重く粘っこいリフと引きずるようなリズム、ハモンド・オルガンの咆哮には、巷のポスト・ロッカーとは比較にならないパワーと荒々しさがある。
つまり、オールド・ロックらしい風格があるのだ。
ギターのプレイは、ロバート・フリップのように狂気を孕んだミニマリズム・スタイルにとどまらない、もっとジャジーでリリカルな、そうアンディ・ラティマーのように歌心あるスタイルをベースにしていると思う。
最終曲終盤でのプレイがみごとだ。
この「普通のロックギター」による安定感もこのバンドの個性になっている。
さらに、ハモンド・オルガンがギターと交錯しつつ迸るように熱い音を叩きつけ続けている。
そして、ユニークなのは、これだけへヴィなサウンドなのに、常に切々と訴えかけてくる調子があるところだ。
ギターを追いかけるようにサックス(ノン・クレジットなので、キーボードの可能性あり。このサックスの音が要所で聴こえてきて盛り上げている)が吹き上げられると、初期の KING CRIMSON そのもののような暴力と叙情性がない交ぜになった世界が広がる。
センチメンタルなピアノによる、ふと立ち止まる瞬間のような演出も生きている。
個性的な声質のヴォーカルを中心に、あえて野卑さを装ったような独特の感じも変わっておらず、巨体の道化師がひざを抱えて泣いているイメージはそのままだ。
VdGG と KING CRIMSON のファンにはお薦め。
個人的には、IZZ の前作以来の大ヒット。
「Circuitry」(6:16)ハードロックかと思わせて感傷を狂おしく煮えたぎらせる傑作。
間奏部でミニマルなギター・アンサンブルにサックス(ノンクレジットなのでキーボードか)が重なると、KING CRIMSON の最終作そのものな展開となる。
音が粘りつく。
「When The Walls Are Down」(7:30)前曲を浄化し、新しい懊悩へと突っ込むヘヴィ・チューン。
硬質な音によるしなやかな演奏だ。
ギターは一転してブルージーなハードロックを卒業し、嵐のようなコード攻めと粘っこいオブリガートでヴォーカルに絡む。
終盤、すべてが一体となってからのサイケデリックでケイオティックな展開がこのバンドらしい。力作。
「Dead City」(5:15)少し毛色の異なる変拍子ポスト・ロック。しかしプログレ。
初期のネオ・プログレ風の秀作といってもいい。
「When She Dreams In Color」(13:41)英国ロックといって問題のない個性的な作品。
強いて言えば、やはり KING CRIMSON。ミドル・テンポの堂々としたインストゥルメンタルに根性を感じます。中盤のメロトロン・ストリングスで悶死。
後半は奇怪な(これはひょっとして下手なのか?)ヴァイオリンのソロも。
メロドラマティックな悪夢。
「Rogue」(24:05)
こちらはヴォーカルが冴える、VdGG 直系の大作。
終始不安に駆り立てられたような調子で彷徨う。
グラム、サイケ風の刺々しさ、苛つきを放ちながらも BETALES 含め英国ロックの血も濃く、重厚かつ悪夢的な懊悩渦巻く世界へと突入する。
(タイトルはフランス語で「Red」です)
終盤のまとめもいい。
オールド・プログレ・ファンには絶対のお薦め。
(SOR 6808)