イギリスのギタリスト「 Gordon Giltrap」。 60 年代後半からフォーク系のスタジオ・ミュージシャンとして活躍。 70 年代中盤からの作品群は、イギリスの古楽をロック化し、シンフォニックなインストゥルメンタルに仕上げたユニークなもの。 Steve Hackett、Anthony Phillips のファンは、ぜひお試しを。
Gordon Giltrap | 12/6 string acoustic guitar, double neck 6/12 string electric guitar | ||||||
Rod Edwards | keyboards | John G Perry | bass | Simon Phillips | drums | ||
guest: | |||||||
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R.W Hudson | trumpet | Henry Lowther | trumpet | Chris Mercer | alto & tenor sax | Jeff Daly | baritone sax |
Chris Pine | trombone | Tony Carr | percussion | Roger hand | percussion | Shirlie Roden | vocals |
Pat Halling | strings leading | George Hamer | strings conducting |
76 年発表のアルバム「Visionary」。
英国の大芸術家にして幻視者ウィリアム・ブレイクにインスパイアされた作品。
内容は、アコースティック・ギターをフィーチュアした中世音楽/トラッド・フォークにシンセサイザーや管弦楽を導入した、ダイナミックでシンフォニックなインストゥルメンタル。
イギリス 18 世紀の世俗/宮廷音楽を雑食性あふれるロックの中に復活させたプログレッシヴな試みであり、きわめてオリジナルなサウンドである。
ロマンティックにして凛とした気品があり、典雅にして逞しい小気味よさもある。
古色蒼然としながらもトラジックな重みよりは躍動的で喜びにあふれたイメージがあるのは、ブレイクの幻想世界と共通するのかもしれない。
いわゆるエレクトリック・トラッドと異なるのは、小編成の民俗楽をそのまま電化しバンド化したのではなく、伝統的な旋律や和声を用いながらもパワフルなリズムと分厚いサウンドといったロックのフォーマットを貫いていること、そして管弦楽を用い、どちらかといえば宮廷音楽の現代版というイメージがあること、などだろう。
特に管弦楽の使用は、古楽からの流れというよりもアレンジの手法としてポップ・ミュージックの側からきたというべきだろう。
そして古楽的な面は、ほぼギターのプレイに集約されているといっていい。
混ぜ合わせの順序はともかく、かなりアーティスティックなアプローチであることに間違いはない。
大雑把にいって、アンソニー・フィリップスよりもテクニカルでマイク・オールドフィールドよりもクラシカルといった印象のサウンドなので、音楽的な存在位置は近いのではないだろうか。
縦横無尽に活躍し、一貫して演奏をリードするアコースティック・ギターのプレイは、クラシック・ギターの技巧とトラッド・フォーク調の哀感あるメロディ、そしてロック的なダイナミズムをすべて満足した、ユニークかつ非常に優れたものだ。
また、ストリングスやブラス、キーボードがもたらす厚みのある音の流れと、小気味よい脈動を生むリズム・セクションとのバランスも絶妙だ。
特に、シンセサイザーが非常にいいニュアンスの音で随所にアクセントをつけている。
弦楽をたっぷりと用いたシンフォニックな昂揚感に加えて、ジャズ系のゲストをフィーチュアしたトラッド版ビッグ・バンドのようなスリルもある。
のどかな田園風景を思わせる音は、YES や GRYPHON のファンにもお薦めできると思う。
名作でしょう。
全曲インストゥルメンタル。
「Awakening」(3:01)
「Robes and Crowns」(1:23)
「From the Four Winds」(3:30)
「Lucifer's Cage」(4:07)
「Revelation」(3:45)
「The Price of Experience」(2:22)
「The Dance of Albion」(1:57)
「The Tyger」(2:00)
「The Ecchoing Green」(2:02)
「London」(3:01)
「Night」(3:52)
「On Wings of Hope」(3:10)ボーナス・トラック。
「Jerusalem」(3:28)ボーナス・トラック。
ブレイクが作曲した作品。
EL&P とは違ってエレキギターがリードするアレンジになっている。
冒頭のテーマ演奏はパン・フルートだろうか。
メロディアスなギター・プレイは、マイク・オールドフィールドに勝るとも劣らない。
「Visionary」(15:19)ボーナス・トラック。
古楽アンサンブルから始まってアコースティック・ギター中心に様々に展開する大作。
アコースティック・ギターは、雅な古楽演奏に加えてトラッド風の土臭いメロディも聴かせる。
アルバム中最大の聴きもの。
(LCVP114CD)
Gordon Giltrap | guitars | Rod Edwards | keyboards | John G Perry | bass | Simon Phillips | drums |
guest: | |||||||
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Henry Lowther | trumpet | Martin Drovwer | trumpet | Roger Ball | alto sax on 2,4 | Stan Sultzman | tenor sax |
Malcom Duncan | tenor sax on 4 | Jeff Daly | baritone sax | Chris Pyne | trombone | Tony Carr | percussion |
Pat Halling | strings leading | George Hamer | strings conducting |
77 年発表のアルバム「Perilous Journey」。
前作同様、ギルトラップのギターをフィーチュアしたインストゥルメンタル作品。
楽曲は、管弦楽、シンセサイザーをフルに使ったロマンあふれるものが中心。
イージー・リスニングというにはタイトであり、フュージョンというにはクラシカルである。
そして、エレクトリック・サウンドを大幅に導入してもなおアコースティックな響きを失わず、さらにはアコースティックな音だけで奏でていたときよりも表現に幅と彫りの深さをもたらしている。
(たとえば、ドイツ・ロックのアプローチと比べて差異を味わうのも一興だろう)
やはりマイク・オールドフィールドと同じく、一種のニュー・エイジ・ミュージックというべきだろう。
宮廷風の典雅と俗謡の軽やかさ、そしてモダンな爽快感もある。
ギター・プレイを中心とする古楽/トラッド志向とクラシック、ジャズ・テイストが自然にとけ込んだ楽曲は、とてもユニークなものだ。
ギタリストのみならず、作曲者としての才能も発揮している作品といえるだろう。
ギルトラップは、たおやかな音色と古楽調のフレージングを活かし、コード・ストロークからソロまで息を呑むようなギター・プレイを見せる。
特に、ハマリング・オンとプリング・オフを巧妙に用いたレガートなフレージングは、個性的でありとても心地よいものだ。
タイトにして軽快なリズム・セクションは、前作に続く強力コンビ、そしてシンセサイザーもファンタジックな音色と味のあるプレイで前面に出てくる。
奔放かつ華麗なパフォーマンスはギター以上といってもいいだろう。
全体的に、おちついたプレイとセンスある音色が、プログレ・ファンには訴えるはず。
前作とやや異なるのは、コンテンポラリーな AOR、ジャズ・フュージョン風のアレンジが現れ、リラックスした雰囲気があることだろう。
この古楽、フォーク、ロックそしてアコースティック・エレクトリックのブレンドされた組み合わさった作風は、強引に喩えれば、ギターをフィーチュアしヴォーカルのない RENAISSANCE か、暗くない マイク・オールドフィールド もしくはスティーヴ・ハケットの諸作だろうか。
アコースティック・ギター及びシンフォニック・ロックのファンにはお薦め。
フル・インストものだけにのり切れないと少し辛いのも確か。
「Quest」(5:11)オーヴァー・ダブされたギターの織り成す典雅なリフレインから始まる、シンフォニックかつジャジーな名品。
シンセサイザーのテーマはファンタジックなストーリーの幕開けに相応しい。
オプティミスティックで若さに満ちており、バンドとしての一体感もある。
ハケットとオールドフィールドの中間くらいのニュアンスである。
「The Deserter」(3:55)前曲を受けよりメローでジャジーなグルーヴを強調した作品。
フュージョン・タッチのソフトなエフェクトを用いるギターとサックスが印象的。
「Pastoral」(5:20)タイトル通り田園風のとても美しいオーケストラ入り作品。
「Morbio Gorge」(4:15)典雅なアコースティック・ギター・ソロからスリリングなバンド演奏へとなだれ込み、やがてビッグ・バンドへと成長するスリリングな作品。
シンセサイザーとオルガンが活躍。
「Heartsong」(5:01)ギターのストロークにのってシンセサイザーが軽快に走るライトなトラッド調の作品。
トラッド調は田舎臭さよりもにぎにぎしさと躍動感を強調しており、シンセサイザーのなめらかなフレージングとごく自然にマッチしている。
傑作。
BBC の旅行番組のテーマソングだったそうです。
「Reflections & Despair」(3:24)オルガン、シンセサイザー、ストリングスを交え重厚な表情も見せる小品。
「Cascade」(3:40)オーヴァー・ダブされたアコースティック・ギターとシンセサイザーをフィーチュアしたファンタジックな作品。
リズム・セクションの切れがすばらしい。
「To The High Throne」(2:52)ピアノとギターによるトラッド風の優美な作品。
ストリングス入り。
「Vision」(3:36)ピアノとシンセサイザーに導かれて 1 曲目のテーマが再現する終曲。
前曲の明るめの変奏かと思わせて、実は 1 曲目とつながるという凝った趣向である。
シンセサイザーと管弦のリードが力強い。
「Heartsong」(7:07)ボーナス・トラック。
「Quest」(6:54)ボーナス・トラック。
「Guitar & Piano」(21:26)ボーナス・トラック。
デモ。
(LCVP113CD)
Gordon Giltrap | guitars, vocals | Rod Edwards | piano, keyboards, synthesizer, vocals |
John G Perry | bass | Simon Phillips | drums |
guest: | |||
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Roger Hand | vocals, guitar on 4, conductor | Shirlie Roden | vocals |
Tony Carr | percussion | Clive Bunker | additional drum on 5 |
Graham Preskett | solo violin | Richard Harvey | recorders |
78 年発表のアルバム「Fear Of The Dark」。
管弦入りのインストゥルメンタルという基本路線を継承しつつ、メロディアスにしてスリリングという独特の作風に、ストレートな優美さやロマンチシズム、ファンタジックなタッチ、スキャットといったソフトな要素が増え始める。
同時にエレキギターのプレイも増えており、バンドとしての音がしっかりと出ている。
エドワーズのシンセサイザーは、魅力的な音色でアンサンブルをリードしたり、バックを固めたり大活躍。
ギターのアコースティックな・タッチが生きるのはこのエレクトリック・キーボードとの対比があるからだ。
ニューエイジものの先取りのようなイメージは、主としてこのキーボード・サウンドから来ているのだろう。
また、パーカッションによる多彩なアクセントも注目したい。
ギルトラップ氏は、アコースティック・ギターでは古楽的なペーソスとブルージーなニュアンスのあるプレイを得意とするのに対して、エレキギターではとても快活でメロディアスなプレイを見せる。
個人的にオールドフィールドの作品よりも、フィンランドのペッカ・ポーヨラの「Visitation」や THE GROUP の作品に近い、アカデミックなイージーリスニングっぽさがある、と思っています。
総じて、エレクトリックでビート感のある演奏とリコーダーなどアコースティックな音のブレンドにメリハリが効いて、明快なサウンドになっている。
ポップス的な聴きやすさは一番。
元々のトラッド系の音が好みであったファンは、ギルトラップが弾き捲くるボーナス・トラックで満足できるはず。
充実した参加メンバーの顔ぶれにも驚きましょう。
「Roots(Part 1 and 2)」(6:09)
「Nightrider」(5:44)名曲。
「Inner Dream」(5:03)
「Weary Eyes」(4:48)「レイラ」の終盤のように穏やかにしてスケールの大きい佳曲。
「Fast Approaching」(5:03)
「Melancholy Lullaby」(2:29)
「Fear Of The Dark」(7:54)劇的なシンフォニック・チューン。大傑作。
「Visitation」(4:35)トラッド風の哀愁が一人の胸の痛みを超えて普遍性を帯びてゆく。
「Catwalk Blues」(2:41)ボーナス・トラック。ライヴ。アコギ一本勝負。
「Smiler」(2:51)ボーナス・トラック。リラックスしたフュージョン風の佳曲。日本の「ニューミュージック」のようです。
「Fear Of The Dark」(3:33)ボーナス・トラック。シングル・エディット・ヴァージョン。
「Oh Well」(3:15)ボーナス・トラック。「あの」リフで有名な FLEETWOOD MAC の作品のカヴァー。ビッグ・バンド風のゴージャスな仕上がり。シングル作品。
(LCVP112CD)
Gordon Giltrap | acoustic & electric guitars | Bimbo Acock | sax, flute, clarinet |
Rod Edwards | keyboards | Richard Harvey | recorders, soprano crumhorn |
Ian Mosley | drums | John G Perry | bass |
John Gustavson | bass on 7,10 | Morris Pert | tuned percussion |
Ric Sanders | violin | Eddy Spence | keyboards |
81 年発表のアルバム「Peacock Party」。
小曲集ながらも「Visionary」以降の路線の最高傑作。
英国古楽、クラシック、トラッド・フォークといったイメージを基調にしつつも、ロックとジャズをもクロスさせたサウンドはきわめてモダンであり明快である。
VENTURES のように明快なギター・インストから、クラシカルなギター・コンチェルト風アンサンブル、フォーク調独奏、果てはビッグ・バンド・スタイルまで多彩を極めたユニークな音楽だ。
作風は、ジャケットのイラストとおりの、はつらつとして愛らしく、陽気で品のあるもの。
演奏は、躍動感あるコード・ストローク、輝くようなリード・プレイを見せるギターとタイトなリズム・セクション、華麗なキーボードが一体となったみごとなものだ。
ギターは、今回もハマリング・オンとプリング・オフを駆使した独特のなめらかなフレージングを見せており、絶好調といえるだろう。
ガット弦でのクラシカルなプレイなど、多彩なアコースティック・ギターのプレイに加えて、今回はエレクトリック・ギターも積極的にプレイしている。
リコーダー、ヴァイオリンなど脇を固める音も美しく、管弦のバックアップもある。
エレクトリックなバンド形態による、躍動的でクラシカルなアンサンブルという意味では屈指の内容だろう。
そしてとどめは、あくまで明快なアレンジとクリアーなサウンド・メイキング。
盟友ロッド・エドワーズ、ジョン・ペリーはもちろん参加、ドラマーは超人サイモン・フィリップスに代わってTRACE、MARILLION の名手イアン・モズレイ、パーカッションには SUN TREADER、BRAND X のモーリス・パート、QUATERMASS、IAN GILLAN BAND のジョン・ガスタフソン、GRYPHON の、いや英国古楽界の名手リチャード・ハーヴェィ、SOFT MACHINE、SECOND VISION のリック・サンダースなど、ゲストの顔ぶれは圧巻としかいいようがない。
楽曲はアルバム・タイトル通り、鳥たちをイメージしたものになっている。
絵本「The Butterfly Ball And The Grasshopper's Feat」で有名なアラン・オルドリッジによるイラストもいつまでも眺めていたい逸品だ。
(ちなみに「Peacock Party」は「Butterfly Ball...」の続編である。また、本作に参加しているロッド・エドワーズは、75 年にロジャー・ハンドとともに「Butterfly Ball...」を朗読つきのコンセプト・アルバムにして発表している)
シルクハットを手にお辞儀をしているのが、最終曲に登場するドードーなのだろう。
全曲インストゥルメンタル。PVK の LP のジャケットは背景が薄青色で、鳥たちのイラストがもっと多く紙面を占めていたと思います。
「Headwind - The Eagle」(3:00)
「Magpie Rag」(2:37)
「Hocus Pocus」(2:20)
「Turkey Trot - A Country Bluff」(2:44)
「Tailor Bird」(2:30)
「Black Rose - The Raven」(4:15)
「Birds Of A Feather」(3:37)
「Jester's Jig」(2:36)
「Gypsy Lane」(2:56)
「Party Piece」(2:41)
「Chanticleer」(3:29)
「Dodo's Dream」(4:12)CAMEL と GENESIS とマイク・オールドフィールドが合体したような傑作。
以下ボーナス・トラック。
「Smiler」(2:51)
「Octavius」(2:32)
「Headwind - The Eagle」(3:18)フルートをフィーチュアしたややアコースティックなイメージのオルタネート・テイク。
(GIL 1 / LCVP105CD)
Gordon Giltrap | acoustic & electric guitars |
Rod Edwards | keyboards |
John Gustavson | bass |
Eddy Spence | keyboards |
Ian Mosley | drums |
Shirlie Roden | vocals, percussion, keyboards |
81 年発表のアルバム「Live at Oxford」。
79 年 3 月 9 日オクスフォード工科大学でのライヴ録音。
気心の知れたメンバーとともに、70 年代後半の名盤からの作品を明快かつ活き活きと甦らせる。
作風は、独特の小気味よい古楽風シンフォニック・ロック・インストゥルメンタルに若干のポップ・テイストを加味したもの。
ハンマリングオンとプリングオフを駆使するギルトラップの流れるようなギター・プレイはもちろん、キラキラとした(若干チープな)キーボードやパンチのある女性ヴォーカルが、豊かだが過剰すぎない表現で安定感あるパフォーマンスを繰り広げる。
録音はベストではないかもしれないが、よく響く小さな太鼓のように小気味のいいアンサンブルがとにかくいい。
ニューエイジ・ミュージック風の透明感も古楽の嗜みとブレンドするとまた格別の味わいが現れるようだ。
ギルトラップはいうまでもなくアコースティック・ギターの超名手だが、エレクトリック・ギターのフレージングにはほんの少しだけぎこちなさが残っていて、それがまた素朴な暖かみを醸し出していてとてもいい。
ライヴならではのギターの持ち替えに注意して聴いてみるのも面白い。
さらに、グスタフソンの切れ味鋭いベース・プレイ、モズレイのタイトなドラミングなど、意外な聴きどころも。
ベスト・アルバムとしても機能する名ライヴ盤です。
インチキ臭い素人テクノとお化粧デカダンスしかなかった時代に、こんな豊麗な音楽がひっそりと現れていたのです。
「Awaken」(4:03)「Visionary」より。
「Robes And Crowns」(2:05)「Visionary」より。
「Quest」(4:46)「Perilous Journey」より。
「The Deserter」(3:43)「Perilous Journey」より。シャリー・ローデンの歌唱入り。
「Fast Approaching」(5:09)第一作「Gordon Giltrap」より。
「Catwalk Blues」(3:50)第二作「A Testament Of Time」より。タイトル通り、ブルーズ・ギターのアドリヴ。古楽趣味はギターのサウンドのみ。後半はメンバー紹介。
「Roots 1 And 2」(2:48)「Fear Of The Dark」より。
「Nightrider」(3:53)「Fear Of The Dark」より。
「Inner Dream」(5:48)「Fear Of The Dark」より。
「Fear Of The Dark」(4:59)「Fear Of The Dark」より。
「Visitation」(12:31)「Fear Of The Dark」より。
「Heartsong」(5:34)「Perilous Journey」より。
「Lucifers Cage」(4:21)「Visionary」より。
(LCVP116CD)
Juan Martin | acoustic guitars, palma |
Rod Edwards | keyboards |
Tony Hymas | keyboards |
John Gustavson | bass |
John G Perry | bass |
Ian Mosley | drums |
Simon Phillips | drums |
Elisa | castanets, palma |
81 年発表のアルバム「Picasso Portraits」。
フラメンコ・ギタリスト、ジュアン・マーティンの作品である。
バッキング・メンバーがほぼギルトラップと重なるのでここで紹介。
内容は、エキゾティックなフラメンコ、ただしバンド・アレンジでかなりメインストリーム・フュージョン風に仕上げてある。
リズムのキレ、キーボード・サウンドの豊かさ(プログレっぽさ)はいうまでもなし。
しかしギターよりも前に出ることはなくしっかりと裏方で支えているイメージである。
そして、これだけの裏方をしたがえたギターの名手の作品なのだから悪いはずがない。
実際、多彩な曲想を独特の哀感と躍動感で貫いた極上のエンタテインメントである。
フラメンコというジプシー音楽の普遍性を借りてフュージョン、ジャズロックの地平を押し広げることを図ったか、はたまた逆に「売れるフラメンコ」を目指したか。
(ニューエイジ・ミュージックの文脈で第三世界の音楽がクローズアップされた時代だったので、その流れでこういう作品を録音した可能性もある)
草葉の陰のパコ・デ・ルシアに聴いてみたい。
1 曲目、6 曲目はリズムの緻密さに驚かされるフラメンコ・ジャズロック。6 曲目ではトニー・ハイマスが超絶キーボード・ソロを放つ。
3 曲目ではジョン・G・ペリーのベースがフラメンコ・ギターと絶妙の呼応を見せる。
4 曲目はロッド・エドワーズのピアノがいい仕事をする。
5 曲目はアルベニスの名曲「Asturias」をバンド・アレンジ。
7 曲目のハイマスのソロを聴いていると MAHAVISHNU ORCHESTRA や RETURN TO FOREVER とあまり変わらない気がしてくる。
8 曲目は完全なギター・ソロ。ギター・ソロの格別のよさに気づかせてくれるためのここまでだったのかもしれない。
ジャケがいいのは当たり前か。(ニューヨークの MOMA にある「Three Musicians」というピカソの絵だそうです。RETURN TO FOREVER のライヴもこの絵でした)楽曲のタイトルはすべてピカソの作品名になっている。
プロデュースはロジャー・ハンド。
(CD FV03)